伝説のホップ「ソラチエース」が生まれ故郷上富良野町に里帰り、サッポロビール国産化に向け植え付け開始

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 クラフトビールの人気が高まっている中、サッポロビールは「サッポロSORACHI1984」に使われているホップ「ソラチエース」国産品の生産拡大を目指し、空知郡上富良野町の契約農家の畑で苗の植え付け作業を始めた。同町のサッポロビール北海道原料研究センターで生まれ、1984年に品種登録された「ソラチエース」は、国内で日の目を見ることなく米国に渡ってからその個性が開花したが、今回36年ぶりに生まれ故郷の同町で量産化に向けた植え付けが始まった。(写真は、「ソラチエース」の苗を持つ石田昭彦・上富良野町副町長=右と「サッポロSORACHI1984」を持つサッポロビール北海道原料研究センター・大串憲祐センター長)

「ソラチエース」が生まれたころ、日本はバブル景気の真っ只中。規格統一型の量産ビールが国内の主流で、個性的な「ソラチエース」は契約農家で栽培された記録はなく日の目を見なかった。米国に渡ると、その個性が一躍注目を集め、「ビールの味に違いを生み出すホップ」として海外の醸造家も高く評価、クラフトビールの重要な存在に位置付けられるようになった。
 サッポロビールは、昨年4月から米国産「ソラチエース」を使った「サッポロSORACHI1984」の販売を開始したが、クラフトビールブームに乗って販売量が増加。この追い風を生かし、「ソラチエース」の故郷で国産品の生産量拡大に向けた植え付けに取り組むことになった。

 生産量拡大に向けた記念の植え付けは6日、サッポロビールのホップ契約栽培農家、佐藤秀幸さんの畑で行われた。サッポロビール北海道原料研究センターで19年9月から培養苗を増殖しながら本数を増やしてきた背丈50cmほどの苗を、上富良野町の石田昭彦副町長や大串憲祐センター長らが植え付けた。畑は約34aで「ソラチエース」約800株が植えられる予定。

(写真は、石田副町長らによる苗の植え付け作業)

 畑には高さ5・4mの木の柱が何本も等間隔に建てられ、その間には無数の糸が張り巡らされており、ホップの蔓がその糸を伝って伸びていくようになっている。今年中に柱の半分程度まで蔓が伸び、冬場は雪に埋もれて地下茎が発達、来春には一気に収獲線と呼ばれる高さまで到達するという。蔓の長さが7~8mになったころで収穫を開始、この畑で約450㎏(全量ビール4に使うと約全量使用すると400kl、大瓶換算3万ケース分)の収穫を計画している。

 記念植樹をした石田副町長は、「上富良野町はビールの街として知られており、地元産ホップとビール大麦100%を使った『まるごとかみふらのプレミアムビール』は今年も素晴らしい味に出来上がっている。生ホップを使った『サッポロクラシック富良野VINTAGE』にも多くのファンがいるが、新たに『SORACHI1984』が仲間入りをすべく、生まれ故郷で増産計画が立ち上がったことを大変うれしく思う。このビールを通じてさらに上富良野のファンが沢山増えることを期待したい」と挨拶した。
 続いて大串センター長が、「上富良野のしばれる寒さと夏の昼夜の寒暖差、乾燥した気候はホップ栽培にとって最適の土地。両方を兼ね備えた土地はなかなかないため奇跡の土地だと思う。米国から輸入していた『ソラチエース』の一部を誕生の地である上富良野で生産する意味は大きい。国産ホップの価値も訴えていきたい」と話した。
「ソラチエース」は、通常のホップの香りに加えてヒノキやハーブ、柑橘系の香りが上品にミックスされている。

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