食品スーパー業界は、少子高齢化や人口減少で買い物客の消費性向が大きく変化している。新型コロナウイルスの感染拡大で食の内食化傾向が高まり、2月は2ケタ成長を果たすなど特殊な事情もあるが、食の消費トレンドの大きな変化は着実に進んでいる。コープさっぽろ(本部・札幌市西区)は、2019年に店舗事業の供給高(売上高)が前年より3%ほど落ちた。不調の原因はどこにあるのか、また20年の店舗事業と宅配事業の見通しはどうなのか。大見英明理事長に聞いた。(写真は、取材に応じる大見英明理事長)
「2019年のコープさっぽろの店舗事業は、コストを下げて利益を出そうとした。火曜日の販促チラシをやめるなど、営業のプロモーションコストを思い切って下げた。また、通常価格より引き下げて販売していた約6000品目のうち、効果の少ない約3000品目の価格を見直した。そのことによって店舗事業は、19年4月から3%くらいの利用下落が起きてしまった。その間に他社に攻め込まれたこともある。守りに入ってしまったことが店舗事業の不調の原因だと分析している」
「19年10月の消費税増税時に、コープさっぽろはキャッシュレス5%還元の対象事業者になることが想定されていたので、期初からの不調を取り戻せるのではないかと考えていた。しかし、ギリギリのタイミングでキャッシュレス5%還元の対象から外れた。各社はコープさっぽろが5%還元対象になると見込んで(コープさっぽろへの)攻めを強化してきたので、我々は年末に向けて苦戦した。感覚的に19年は、過去5年くらいの中では一番厳しい1年だったと振り返っている」
「14年に消費税が8%になった時、価格表示を消費税込みの内税表記にしたため割高感が出て売り上げは2~3%下がった。今回もそれに匹敵するくらい(売り上げが)下がったので消費増税がある年というのは、コープさっぽろには鬼門の年なのかもしれない」
「18年3月から年金受給者も介護保険料値上げがあって年金受取額が減った。そこから国内のスーパーマーケットは売り上げが停滞局面から減少局面になった。また19年6月の老後資金2000万円不足問題があってから、さらにスーパーマーケットの売り上げは厳しくなった。先行きの見通しに不安感が出てきたからだ。価格競争が激しくなり、商品ごとに安い方に買い回りをする傾向が一段と強まった」
「年末は家族で贅沢に食材を囲む例がこれまでは多かったが、19年の年末商戦は例えば高級和牛の売り上げが落ちるなど、贅沢のレベルが一段下がった感じを受けた。総じて高級商材の売り上げは減少傾向が出てきた。みかんの箱売りも動きが鈍くなっており、当たり前だった年末型商品がかつてほど売れなくなってきた」
「19年のクリスマスは23日の祝日がなくなった関係で18年までのクリスマス商戦と趣が変わった。つまり家庭内だけで祝うクリスマスになる傾向が強まり、12月24日の夕方に客数が増えただけで23日は客数が伸びなかった。クリスマスに踊らなくなった感じを受けている」
「19年の売り上げ傾向を見ると、コープさっぽろの商品政策が今の顧客層に合っていないのではないかという問題意識を非常に強く持っている。札幌市内の1人世帯は40%を超え、2人世帯と合わせると70%を超えている。商品の単位や量がこうした1人世帯や2人世帯に十分に対応できていたかどうか。そのあたりのアプローチが弱かったと考えている。実質ニーズに合う商品構成に変えていかないと生き残れないのではないかと思っている」(続く)