赤レンガとして親しまれてきた旧札幌西武の解体工事が始まり、駅前通に面したトンガリ帽子の屋根部分まで一面フェンスに覆われ年内の解体終了まで一気に工事が進む見通しだ。しかし、土地・建物を取得した家電量販大手のヨドバシカメラがどういう建物を建設するのかは不明。解体後は、しばらくの間、駅前通が広大な更地になるのは避けられない。ヨドバシと札幌市は意思疎通が出来ておらず、面会さえも実現していない。札幌駅前一等地の開発はヨドバシの手中にある。(写真はトンガリ屋根まですっぽり覆われた旧札幌西武)
 
 旧札幌西武は、札幌で初めてのデパート、五番舘がルーツ。五番舘をさらにさかのぼると、明治26年に創立された札幌興農園に行き当たる。札幌興農園は札幌農学校を卒業した小川二郎氏が始めた種苗農機具販売の会社だった。明治39年に現在地にデパートの前身となる五番舘札幌興農園がオープンしている。
 
 建て替えを経て五番舘は1970年代に入ってダイエーと提携したこともあったが、その後提携を解消して西武の傘下入りし五番舘西武として札幌軟石を使った赤レンガ造りの重厚な佇まいで市民に親しまれていた。
 
 五番舘西武は、97年6月に札幌西武と改称されて五番舘の名前は消えた。西武百貨店は、そごうとの経営統合でミレニアムリテイリングとなり、2006年6月にセブン&アイ・ホールディングスの傘下に入った。
 
 札幌西武は30代、40代の働く女性をターゲットに展開してきたが、03年3月にJRタワーが開業し、大丸札幌店などと競合が激化していたこともあって09年9月末をもって100年以上の歴史を閉じた。
 
 札幌西武の土地・建物を取得したのはヨドバシカメラ。札幌市は札幌西武の街区を含めた一体の再開発構想を提示していたが、ヨドバシとの接触は一切出来ていない。セブン&アイを通じてヨドバシとの接触を試みたが実現していない。もともとヨドバシは自治体との折衝を忌避する傾向があるようで、独自の開発を行ってきた。
 
 旧札幌西武の解体は、東京の田中建設工業が行っているが、札幌市とは解体届出等の事務的な接触しかないのが実情。
 
 解体工事は年内で終了する見通しだが、ヨドバシは札幌駅北口にある現店舗の契約期間が残っているため当面は新店舗建設に踏みきらないと見られている。
 札幌駅前の一等地は、しばらく更地のままで推移し、ヨドバシがどんな建物をどう作るのか、札幌市は最後の最後まで関知できない状態が続きそうだ。


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