苫小牧市や札幌市、江別市などで食品スーパー「フードD食彩館」や「フードD・LISTA」、「フードD・BOSCO」など13店舗を展開する豊月(本社芦別市、本部苫小牧市/豊岡憲治社長)が、ディスカウント路線に舵を切り始めた。ここ数年は高質化で生鮮食品の品質アップを図ってきた同社。一定のレベルに達したとしてグローサリー商品などのディスカウントを強化、クォリティ&ディスカウント(Q&D)を進める。食品スーパーの競争は激しく、豊月は「品質」と「低価格」で勝ち残りを進める。豊岡憲治社長(70)にインタビューした。(インタビュー詳細は11月14日発売の北方ジャーナル誌12月号に掲載)(写真は、豊岡憲治社長)
――以前はディスカウントの食品スーパーとして展開してきたのでは…。
豊岡 当社が苫小牧市内に本部を置き食品スーパーを始めたのは1970年代で、30数年前にディスカウント店に切り替えて売り上げを大きく伸ばした。10年ほど前から、「食彩館」として品質と低価格の両面を追求する業態を構築しようと取り組んだ。しかし、軌道に乗るまでにいかず、6年前から生鮮食品の品質を重視する“高質化”に切り替えた。
売場や接客を含めた高質店舗として「LISTA」(江別市)、「BOSCO」(札幌市手稲区)を新規出店してきた。高質化路線によって生鮮食品の品質や売り方のレベルが上がってきたので、当初の目標だった品質と低価格の両面を追求する「Q&D」業態を目指すことにした。
――道内のディスカウントストアは、「ザ・ビッグ」(マックスバリュ北海道が17店舗展開)や「トライアル」(福岡本社のトライアルカンパニーが21店舗展開)が先行している。勝算はどうか。
豊岡 関東でもディスカウント競争が激しくなっているが、強いディスカウント店はみんな生鮮食品が強い。例えばロピア(神奈川県藤沢市)やオーケー(横浜市)がそう。消費者の実質所得は増えておらず、どこでも買えるグローサリー商品は価格の安いところにお客が集まる。しかし、生鮮食品は安かろう、悪かろうではお客は呼べない。惣菜を含めた生鮮食品のレベルが高く、なおかつグローサリー商品が低価格というディスカウント店が今後の食品スーパーの方向だと考えている。
――Q&D1号店が苫小牧市の「フードD365OASIS(オアシス)」ということか。
豊岡 そうだ。2014年4月に高質店「OASIS」に転換した店舗を今度はQ&Dの業態に転換して10月21日にオープンさせた。店舗名には「365(サンロクゴ)」を入れて3000品目以上を毎日低価格(EDLP=Everyday Low Price)で提供する。この店舗は30数前に「澄川店」としてオープン、その後「フードD2」、「フードD澄川食彩館」、「ザ・プライス」、「OASIS」そして「フードD365OASIS」とほぼ5年に1回ずつコンセプト変えながら展開してきた。
今回、Q&Dの店にするため周囲の競合店の価格を調べ、グローサリー商品はどこよりも安い価格設定にした。チラシを減らして販管費を下げ、粗利(売上げ総利益)も20%以下にする。ディスカウントは口コミで徐々に広がっていく。前年比130~140%の売り上げ増になると予想している。1年以内に13店舗すべてを「365」にしてQ&Dの店舗に変更していく。
――道内はアークス、コープさっぽろ、イオンの3極とされ、ダイイチなどセブン&アイ・ホールディングスグループも高いシェアを持つ。資本的に独立しているローカルスーパーは生き残れるのか。
豊岡 当社の前1月期は売上高約170億円、経常利益は約3億円で小回りの利く規模。どんどん新しいことに挑戦していけるのが我々ローカルスーパーの長所で、その挑戦からチャンスが生まれる。「365」店舗では、アークス、コープさっぽろ、イオンに絶対負けない価格を出す。(以下、北方ジャーナル誌12月号参照)