東日本大震災が北海道経済にも影響を及ぼしている。不要不急の消費が萎む一方で、食料品を中心にした食品スーパーは買いだめの特需要素もあって3月は前年を超えた。震災が北海道の食品スーパー業界をどう変えるのか、新日本スーパーマーケット協会会長でもあるアークスの横山清社長に聞いた。(写真は横山清社長)


――3月の道内食品スーパーは買いだめなどがあって伸びたというが――。
横山 特需が出ているが、このリアクションが来るのははっきりしている。米を10㌔、20㌔も余計に買っても、2人や3人の家庭で10㌔の米を食べるのにどれだけかかるのか。反動減になるのは当然だろう。
――5、6月まではまだメーカーや卸、各食品スーパーの在庫があるが、6月以降は品不足になると見られている。NB(ナショナルブランド)製品もPB(プライベートブランド)製品もサプライチェーンの寸断で品薄傾向になるのではないか。
横山 業界ではそう言っているが、実際に今は完全なオーバープロダクト(生産過剰)だ。2000万㌧も余計にモノを作っている時代に品不足で困るということは絶対ないだろう。調味料だって家庭の台所には溢れている。少し倹約すれば、半年くらいに新たに買わなくても良い商品がある。品不足よりも消費者の倹約の方が影響が大きいし、実際そうなるほうが(食品スーパー業界にとっては)怖い。
――それでも中小スーパーでは、新たな調達ルートを作るために関西地盤の食品卸にアプローチするなど相当な危機感を持っている。菱食や国分のような食品卸では大手スーパーに優先して食品を供給するため、中小に回ってこないのではないかと。
横山 長い目で見ると、小さいところは生き残るチャンスがだんだんと失われていきそうだ。今のところは、特需があるがこれは瞬間的なことで、景気が絶対に悪くなるのははっきりしている。節約ムードでちょっと消費が締まるだけで3%から5%減る。GDPで3%上げるのに大騒ぎするのに、需要面で節約マインドが浸透すれば5%程度なら簡単に下がってしまう。
挙げ句の果てに、品物がない中で安売り競争が起きるだろう。今までは品物が溢れている中での安売り競争だったが局面が変わる。表現は悪いが、呼吸困難なところに首を絞められたらどうなるか――小さい規模のところはそれこそ干上がってしまいかねない。
――ディスカウント業態で、きっちりした形の出来ていないところは厳しいといいます。
横山 大手のイオングループでさえ、『ザ・ビッグ』でなりふり構わない安売りをしている。これは何を意味するかというと、ああいう体制の企業ですら、採算が取れない、売り上げが上がらないということ。価格を安くしたら売れるではなくて、安い価格で売ってきたところに脅かされた領域を、今度は取り返そうとするものだが、他の安売り店から全部取り返すのではなく、周辺のところから吸い上げていくわけだから、規模の小さいところはより厳しくなってくる。
横山 今度の震災を契機に日本の経済も変わっていくだろうし、消費の動向も変わってくる。元へ戻って終わりというわけには絶対いかない。経営スタンスをどう取るかでこれから10年間と言わず3年間でもっと格差が出てくるのではないか。

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