コープさっぽろ(本部・札幌市西区)とファミリーマート(本社・東京都豊島区)は昨年12月28日付で業務提携に向けた基本合意を締結した。コープさっぽろが昨年夏にファミリーマートに収納代行機能を組合員に提供できないかと話を持ちかけたことがきっかけ。両者の経営資源のうち相乗効果が期待できる事業を見極めて共同で取り組む。(写真は、コープさっぽろ本部)
ファミリーマートは、セイコーマート(本社・札幌市中央区)の子会社と合弁会社「北海道ファミリーマート」を設立して道内でのコンビニ出店を進めてきたが、昨年3月に合弁を解消。店舗は解消時で75店舗あったが、そのうち27店舗はセコマの子会社によるFC(フランチャイズ店)のためセコマへ転換、2店舗は閉店などのため現在は46店舗とイオン北海道(同・同市白石区)のコンビニ型スーパー「まいばすけっと」(34店舗)と同じような店舗数だ。
その後、セブンーイレブン、ローソン、セコマが出店を続けていく中で、ファミマの出店はゼロ行進。関係者の間では、「ファミマは北海道を諦めた」と言われるほどだった。ユニーグループ・ホールディングス(同・愛知県稲沢市)との統合交渉があったため、北海道に目を向けていられなかったこともあったようだ。
そんな中で、コープさっぽろの提案は渡りに船だった。コープにとっても、ファミマが乗ってくることは想定できた。「公共料金やその他の収納代行などサービス機能を作ろうと思ってもなかなか作れない。コープさっぽろは、宅配事業や配食事業で一戸一戸の家庭と繋がっており、流通小売業で今後もっとも必要とされる軒先に繋がる“ラストワンマイル”のネットワークがある。お互いに補完関係があり相乗効果を出せることがシェアできたので業務提携に向けて基本合意した」(大見英明コープさっぽろ理事長)
ファミリーマートは、2025年に団塊世代が後期高齢者入りするまでにコンビニの在り方が大きく変わると見ている。ファミマは地域デリバリーのネットワークを構築することが必要としており、そのネットワークに健康食品など自社開発商品を乗せていく検討も始めている。
コープさっぽろは、宅配車両1100台、移動販売車83台、配食車両300台を有し、戸別配達網を道内に張り巡らせており、ファミマが相乗りすれば経営的な魅力がある。ファミマにとっては、多極分散型の最も効率の悪い北海道で“ラストワンマイル”のノウハウをコープさっぽろとの協業で磨く狙いもある。
基本合意書には、こうした“ラストワンマイル”のネットワーク利活用だけでなく店舗や生産工場の分野も含まれている。コープさっぽろは本体で少なくても1店舗のファミマを運営する考えだが、将来的には子会社の出資でエリアフランチャイズの受け皿会社を作り、ファミマの出店を行う可能性もある。
生産工場の協業では、コープさっぽろのPB(プライベートブランド)商品をファミマに供給、ファミマのPB商品をコープさっぽろの店舗で販売することも想定される。
また、コープさっぽろは、貨物運送業のエースと物流子会社の北海道ロジサービスを設立しており、デリバリー基幹路線があるため、現在セコマ子会社が行っているファミマの物流を引き受ける可能性もある。
コープさっぽろの2016年3月期は、経常利益55億円を見込み過去最高になるのは確実。子会社の累積損失を本体に組み込むことで子会社、関連会社のオール黒字化を達成、残るアキレス腱は店舗事業の約10億円の赤字解消。これも3年後には黒字化が予測され、約360億円の繰越損失解消は7年計画で解消見込み。17年度からは出資配当に代わる出資優待制度も始める。
こうした経営環境の上げ潮の中で、ファミマ本体と組み将来の伸び代を手にした意義は大きい。ファミマにとっても、セコマ、セブン、ローソンに大きく水をあけられた北海道で同質競争をしていても追いつくことはできない。最後発だから手掛けられる戦術をコープさっぽろとどう構築していくのか注目される。
コープさっぽろにとってコンビニと協業する選択はファミマしかなかった。セブンは自前主義で相手にされず、ローソンは三菱商事が大株主のため三菱食品→CGC(共同仕入れ会社)→アークスへと繋がっている。さらにセコマとは、地方に行けば行くほど競合しており補完性が少ない。ファミマは必ず乗ってくる――大見理事長の深謀はストライクだったようだ。