帯広・十勝地域の流通戦争が秋以降に本番を迎える。同地域の地元スーパーとして知られている「いちまる」(本社・帯広市)の全14店舗が10月1日、イオングループの「マックスバリュ北海道」(同・札幌市中央区)に承継されるからだ。「秋、燃ゆ」を迎え撃つダイイチ(同・帯広市)の鈴木達雄社長(68)は、「激闘」を宣言、「徹底的に戦う」と対イオングループ・帯広作戦を実行に移す考えだ。IMG_0572(写真は、鈴木達雄社長)

 ダイイチといちまるは、過去に資本業務提携をしていた。地元スーパー同士、外敵から共同で身を守ろうとした地元軍団でもあった。しかし、ダイイチが2年前にセブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂と資本業務提携したことを機に両社の関係は瓦解。いちまるは、ダイイチとの提携を解消した後、電撃的にイオングループのマックスバリュ北海道と手を組み、地元勢同士がセブンとイオンの代理戦争という最前線に身を置くことになった。
 
 しかし、いちまるの財務体質はイオングループが考えていた以上に傷んでいたとみられ、いちまるのスーパー事業は一部店舗の土地建物を持ついちまる子会社とともに会社分割され、マックスバリュ北海道が買い取った。10月1日、いちまる全14店舗から「いちまる」の屋号は消え、長く親しまれてきた帯広ブランドは幕を閉じる。
 
 マックスバリュ北海道の直轄となる帯広・十勝の旧いちまる店舗は、「活性化されることは間違いない」(ダイイチ鈴木社長)。これまでほとんど手つかずだった店舗リニューアルへの投資やMD(マーチャンダイジング=商品政策)、さらに承継する従業員の処遇も好転するのは確実で、帯広・十勝圏のダイイチ・いちまる・福原(アークスグループ)の3大勢力の均衡が崩れることは必至だ。
 
 マックスバリュ北海道の札幌圏、函館圏、釧路圏の店舗は、地域色を取り入れたり、簡便・即食といった消費者ニーズに応じた売場づくりを行うなどして売上げを伸ばしている。これまで空白だった帯広・十勝圏で一挙に14店舗のリアル拠点を持つ意味は大きい。
 
 10月、岩内仙峡の紅葉が本番を迎えるころ、帯広・十勝を舞台に流通戦争の火ぶたが切られる。迎え撃つダイイチは、「中途半端な戦いはしない。徹底的に負けない戦いを繰り広げていく」(鈴木社長)と述べ、政策総動員で挑む考えだ。ただ、ダイイチ店舗のある旭川市内や札幌市・恵庭市でマックスバリュ北海道の店舗と近接して戦っているケースは、1ヵ所程度しかない。相手の手の内を知るという面において、互いにここ数ヵ月間の斥候(せっこう)がモノを言いそうだ。


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