アークス(本社・札幌市)が岩手県・宮城県を地盤とする中規模スーパー、ベルグループ(同・岩手県盛岡市)と9月1日付で経営統合することを決めたが、アークスの三浦紘一会長と横山清会長が31日、札幌証券取引所で揃って会見した。横山社長は「5000億円が目線に入ってきた。次は1兆円を目指したい」と語り、三浦会長は「仙台を中心とする宮城県は生協とイオン系、セブン&アイ系の3強が強いが、今回の経営統合で基盤ができた。今後も(統合の)可能性を閉じていない」とさらに経営統合を進めて行くことを明らかにした。(写真は、会見後に撮影に応じる三浦会長=右と横山社長)
会見要旨は次の通り。
横山清社長。
「協同組合ベルセンターがベルグループの母体。そもそもは、ジョイスの創業者が提唱して作った協同組合でジョイス創業者の夫人の弟である遠藤須美夫さんが社長を務めている。今のジョイス社長の小苅米秀樹社長の叔父さんにあたり、そういう意味ではジョイスとベルグループは親戚同士で縁がある」
「共同仕入れ会社の東北CGC社長はベルグループ社長の遠藤さんで副社長が三浦さん」
「東北は今回のベルグループとユニバース、ジョイスの3社が中心になって鼎のように強固な基盤ができる。地域密着の地場スーパーを大手に負けずに展開するには、最低でも地域で30%のシェアが必要。東北六県でそれぞれ違いはあるが、各エリアで300億円の売上げがあれば東北でシェア30%に持っていける。宮城県はジョイス1店、ベルセンター7店でシェアは10%近くになる。宮城県で新しい地歩を築く大きな存在になるだろう」
「現在、青森県と岩手県では28%のシェアがあり、今回のベルグループ統合で岩手県は50%超すことになる。秋田は2店、山形ゼロだ。東北・北関東は、三浦さんが中心になって(経営統合を)やっていくことになっている」
「今の状況の延長線上には、中小スーパーが発展、存続できる可能性は少ないと危機感を持っている。我々は、株式会社と協同組合を足して2で割ったような会社として進んでいる。地方のスーパーの方々から(アークスに入りたいという)手が上がっている」
「5000億円が目線に入ってきた。次の目標は経営コンサルタントの田辺昇一さんが言っていた『1、3、5の原則』から言えば、1兆円を目指すことになる。私の経験則から言っても『1、3、5』は当たっていると思う」
「ベルグループは、(一物三価の業態である)ビッグハウスの生みの親で盛岡市に1号店ができたあと2号店はラルズの太平店。ラルズが育ての親だ」
三浦会長。
「仙台は生協とイオン系、セブン&アイ系の3つのシェアが高い。かなり外からの新規参入を拒む発想がある地域だ。こんなところにまで出店するのかというところまで出ており、あまり立地は残されていない。そういう中で既存企業の新店の成績が良くないと聞いている。しかし、仙台だけが宮城県でもないし頑張っている企業もあるので(新たな経営統合の)可能性閉じている訳ではない」
「アークスの東北展開では、これまでは相手から話が来るのを待つ部分があった。一緒にならないかとこちらから積極的に話を進めたのは少ない。今回もトップ同士が30年来の付き合いでなるべくしてなった。ベルグループとの話は1年以上前からあって具体的になったのは昨年の11月。正式には今年1月から」
「今も様々な形での話はある。相手先のナンバー1とナンバー2の意見が一致していない場合もあるので成り立たない場合もあるし急転直下決まる場合もある。自社のみで店を増やしていく場合と違ってハッキリとした形で次は何県と言えない」
ベルグループとの経営統合についての会見が終了した後、消費増税やネットとリアルの融合を意味するオムニチャネルについても三浦会長と横山社長はそれぞれ持論を語った。
横山社長。
「消費増税については楽観していない。駆け込み需要の後は停滞どころか食生活が変わるぐらいのインパクトがあるのではないか。米国ではニューノーマルという言葉が一般的になっている。給料が上がらない層で、米国の食料品支出は25年前より比率が低くなっているくらい。最近、ハワイでスーパーをじっくり見たが、ディスカウントスーパーは混んでいたが高級スーパーなどは閑散としていた。4月からの3%に加えて来年10月の2%増税で我々も覚悟を決めないといけない」
「オムニチャネルについては、ある意味で出遅れているが、これからそういうものもあるかなという段階と認識しており、まさにこれからの問題だ」
三浦会長。
「米国のスーパー、トレーダージョーはネットビジネスはやらないと決めたそうだ。アークスはやるなら急がないといけないが、無視するのも選択肢のひとつと考えている」
東北・北関東の統合については三浦会長が中心になると、横山社長は二度繰り返す場面があった。逆に言うと横山社長は東日本以外で統合に向けた活動をするとも聞こえる。首都圏での中央アークス、西日本でのアークスというように全国3ブロックで同様のCGC母体の連合体を形成していく働きかけを強める考えのようだ。「1兆円サークルを全国3ブロックで作り合計3兆円になれば、巨大資本と戦えるだろう」と横山社長はサラリと語っていた。