日本経済新聞社が札幌支社を開設して来年3月で50年になることを記念したシンポジウムが14日、札幌市中央区の札幌パークホテルで開かれた。テーマは、『北海道の食と農を考える』で、北海道に優位性のある農業を牽引役に食産業の競争力をどう高めていくのかなどについて経済界や農業界のトップが討論した。(写真は、『北海道の食と農を考える』パネルディスカッション)
基調講演では、近藤龍夫北海道経済連合会会長・北海道食産業振興機構理事長が、北海道農業の現状と方向性について話し、「北海道農業のことが中央にはあまり知られていない。農業政策を作る段階から北海道は参加すべきだ。ビートと言ってもビートたけししか知らないようでは困る。もっと宣伝しないと」と語った。
近藤会長は土地利用型農業の所得補助率についても、「日本は75%だが、フランスは120%、ドイツは130%、イギリスは110%、デンマーク190%、フィンランドは380%もある。基本食材は自国で賄うことが欧州では徹底している。諸外国では自由化に先立ち農業構造改革と併せて経営安定化支援が実施されており日本でも速やかな対策が必要」と述べた。
TPP(環太平洋経済連携協定)で関税撤廃された場合に北海道農業への影響は約6000億円と試算されているが、「北海道の食関連産業の活性化に取り組んでいる道経連は“強い農業つくり”を目指して農業政策・制度などの整備を早急に進めるべきと考えている」と持論を展開した。
続いて行われたパネルディスカッションでは飛田稔章北海道農業協同組合中央会会長、横内龍三北洋銀行会長、髙杉豪伊藤忠商事北海道支社長が参加、林美香子慶大大学院特任教授のコーディネートで北海道農業の未来像などを議論。
飛田会長は、「農家戸数4万戸で食料自給率200%の北海道は、1億2000万人の国民の命を預かっていることを自覚してその責任を果たしていかなければならない。持続可能な農業をどう進めていくかが大事で自給率を300%、500%をしていくことを目標に行政や国に体制づくりを働きかけて発信していくことが必要」と述べた。
横内会長は、「農業にも創意工夫、イノベーションが求められる。産業用米や飼料用米を作ってエタノール原料などに使うことや、輸入とうもろこしの代替可能な作物を生産して自給率を高めていくことも考えていくべきだ」とした。
また、髙杉支社長は、「当支社では5年間で300社の食関連企業と商談したが、『製造ロット面』、『販売営業面』、『パッケージデザイン面』など毎回同じ相談がある。共通の相談窓口を作った方が良いのではと感じる。また、農家や生産法人は、問屋やメーカーの機能を上手に使った方が良いのでは」と提案した。コーディネーターの林氏は、「消費者が買い支える意識を持つことと北海道の農産物のファンを増やしていくことが大切」と結んだ。