JA北海道信連の主催による「JAグループ北海道農業経営フォーラム」が2日、札幌パークホテルで開かれた。道内の農業生産法人を対象にした経営セミナーで、系統組織がこうした取り組みをするのは初めて。道内各地の法人経営者ら約500人が参加した。主催者挨拶で、JA北海道信連の牧野勇代表理事理事長は、「このセミナーは、JAグループ北海道が、地域農業を支える農業法人の事業展開やソフト機能を高めるためのサービスを提供するために開催。農業者の期待に沿えるように独自性を発揮したい」と述べた。(写真は小林芳雄氏=左と高橋守氏=右、続きを読むをクリックして本文掲載ページに入りますと写真が左右が入れ替わりますのでご了承ください)
農業生産法人は2011年1月現在で道内に2649法人あって、そのうちで複数の農業者からなる法人は917。また、昨年新設された法人は123にもなる。平成に入って以降、順調に法人は増加しており、農地の集約化や担い手不足を背景に今後も法人経営を強化していくことが不可欠になっている。また、法人化によって農産物の製造・加工など経営の多角化、所謂農業の6次産業化も進んでいる。
農業法人の経営には、様々な課題やニーズがあり、地域の実情に即してより発展できる基盤を構築することが求められており、今回のフォーラムは法人経営者とJAとの連携や連合会同士の連携を強めていくきっかけにすることも目的。
セミナーでは、農林水産事務次官を務めた現農林中金総合研究所顧問の小林芳雄氏が「日本農業を取り巻く情勢と北海道農業の将来」と題して講演。小林氏は、日本の農業は①45年間で農地が607・1万haから462・8万haに約2割減少(減少分は143万haで福島県や長野県とほぼ同じ面積)②15年間で農業所得は半減(1990年度の6・1兆円が2008年度に3兆円に)③平均年齢は65歳と高齢化し後継者も育っていない④全国で担い手がいない地域が半数以上――という実態を紹介し、「魅力があって持続できる農業経営であることが必要。先の見通しを示して農業者が経営戦略を持てるようにし、政策的支援でカバーして支えていくことが基本的枠組みだ」と指摘した。
小林氏は新規就農支援の例としてフランスの青年就農交付金制度に着目、行政の手厚い政策(平均受給額1万6500ユーロ=約180万円)で支援が終わる5年の後にも95%が農業に定着していることを紹介し、自らも委員を務める政府の食と農林漁業の再生実現会議でも注目されていることを報告した。
最後に北海道農業の将来と期待される役割について、小林氏は「北海道は先進農業地帯として、規模拡大や6次産業化の取り組みを活発にしていくことが求められている。後継者育成でも全国のモデルになって若い人の憧れを集めるようにするべき。また、バイオマスや再生エネルギーなど地域資源を生かした取り組みにチャレンジして欲しい」とエールを送った。
また、ニセコで260頭の牛を飼い、生乳の生産加工のほか乳製品販売やレストランを経営している高橋牧場の高橋守社長が「法人化したのは何のため?―私の農業経営と地域共生―」をテーマに講演。高橋氏は、「法人化したのは規模拡大や効率性向上のためではなく、従業員の雇用、地域のため。経営体の継続のためには地元に根ざした人材育成が必要」と足元から発想していくことの大切さをアピールしていた。