北海道産の小麦をもっと食べようという「麦チェン」運動が2年目を迎えているが、生憎の天候不順で今年の収穫量は悪かった前年よりも更に6割程度に下回りそうだ。
道産小麦の生産量が少ないと、これを使ったパンやラーメン・パスタ、菓子、うどんなどに影響する。産地の江別や下川、美瑛などでは地元産小麦を使った食品で地域おこし、街おこしを行っているが、こうした取り組みにブレーキがかかってしまうことが懸念されている。
数ある農産物の中で、小麦は農商工連携が取りやすい素材。大規模な加工施設が必要なく、街の中で生産・加工・流通・消費を完結できるため、道内の多くの小麦産地では地産地消による特産品、B級グルメで地域に活力を取り戻そうという動きが広がっている。
美瑛町は丘のマチとして全国的に有名だが、小麦のマチとしても多くの観光客を呼び込んでおり、小麦による地域づくりの成功例だ。
小麦のマチに至るまでの道のりは平坦ではなかった。そもそものきっかけは、12年ほど前に美瑛の街づくりを立ち上げたNPOのメンバーたちが町民に行ったアンケートだった。
そこには、「美瑛は農産物のマチなのに地元のモノが食べられない。幼稚園や小学校のおかずも他の地方で作ったものを持ってきている」という素朴だが重要な問題意識だった。
NPOメンバーたちは、地元の農産物が素材のままにマチから出て行っているシステムがおかしいとして、7~8年前にふるさと市場という地元産農産物を使った食品が買えるスポットを設け、地元で獲れた農産物を地元で加工し販売する体制を整えた。
人口1万7000人の美瑛町は他のマチと同様に加工業者もどんどん減っていたため、せっかく地元産小麦が獲れても製麺業者がいなかったり地産地消には程遠かったが、他のマチで加工したのでは意味がないとして製麺業者の誘致や育成で地元加工できるようにした。
そこから生まれたのが美瑛カレーうどん。美瑛産小麦「香麦」を使い、具材には美瑛のしゃぶしゃぶ肉や美瑛の野菜、びえい牛乳をつけるなど地元産を使うことを徹底している。
美瑛町は地元の農産物を地元で食べたいという素朴な欲求が原動力になった。
北海道は農業にしろ水産業にしろ、地元産の美味しい素材を素材として本州などに供給することがメインになっており、地元で美味しい素材や加工品を食べられない“美食難民”とも言えそうな経済構造になっているのが閉塞感をもたらしている大きな原因になっている。
今年の小麦の不作は、素朴な欲求から沸き起こった地域のうねりにどんな影響を与えるのか。天候に左右されるのも天の定めかも知れない。
(写真は、10月16日に江別市の札幌学院大で行われたコムギフェスタのフードコートで販売された美瑛カレーうどん)