過剰なタクシー台数を強制的に減車できる改正タクシー事業適正化・活性化特別措置法(タクシー新法)が20日の参院本会議で可決、成立した。過剰と指定された地域では新規免許や増車申請は許可されず、地域協議会の決定した減車には国が関わることで強制力を持つようになる。タクシー新法成立を要請していた札幌ハイヤー協会の加藤欽也会長(昭和交通社長)は、「札幌交通圏は明らかに台数が2割多い。新法成立は念願だった。タクシー運転手の給与アップに繋がる」と歓迎の姿勢を示した。(写真は、札幌ハイヤー協会の加藤欽也会長)
タクシー業界は2002年の規制緩和以降、全国各地の交通圏で新規免許や増車が自由化され異業種や全国企業が相次いで参入、台数の過剰な状態が続いた。09年には新規免許を制限するタクシー事業適正化・活性化特措法が成立したものの、増車は例外で、さらに特定地域と呼ばれる国土交通省が指定した過剰地域に設けた学識経験者や消費者団体などが入った地域協議会の決定も強制力がなく自主的減車にとどまっていた。
このため、協会に加盟していないアウトサイダー企業は減車に応じず事実上、「正直者がバカを見る特措法だった」(タクシー事業者)。
今回成立した改正タクシー特措法は、自民・公明・民主3党による超党派議員立法。特定地域に指定された過剰交通圏では地域協議会の決定に強制力が付与され、新免、増車を認めないことに加え減車も独占禁止法の適用除外として認められる。基準運賃の上~下限の幅が狭くなり格安運賃も認めない。
札幌交通圏では、規制緩和前のピーク時(91年)にはタクシー運転手の年収が500万円を超える時期もあったが、その後の規制緩和による台数増加と不況が重なり、ここ数年は平均200万円台にとどまり運転手の高齢化も進んでいた。旧特措法の下で1割減車を実施したが年収アップには結びついていない。
タクシー新法の成立を受けて札幌ハイヤー協会の加藤会長は北海道リアルEconomyの取材に答えた。
「新法成立は念願だった。運転手の給与を上げる取り組みをしていかなければいけない。現状の年収200万円程度の労働環境は明らかに良くない。私は札幌交通圏では適正台数に比べて2割多いと思っている。この2割を減らすことで年収300万円台に乗せたい。そうなれば若年層もタクシー業界で働くようになるだろう。タクシーの利用は、これから高齢化の進展で介護など新たな分野が増えてくる。高齢の運転手では対応できなくなり体力のある若い運転手のニーズは高まってくる。ただ、消費増税が控えておりタクシー料金は実質値上げになる。そういう中で利用が伸びるか不安な面もあるが、地域協議会でしっかり議論して課題を超えていきたい」
また、格安運賃の札幌MKの新規免許取り消しを求めて札幌ハイヤー協会が北海道運輸局を提訴した裁判について、「一審敗訴で現在控訴中だが、タクシー新法の成立を受けて協会の理事会で対応を決めたい」と加藤会長は取り下げも視野に入れていることを明らかにした。