札幌エムケイの低額運賃によるタクシー参入を巡る行政訴訟で敗訴した札幌ハイヤー協会(会長・加藤欣也昭和交通社長)と同協会加盟3社は札幌地裁判決を不服として23日までに札幌高裁に控訴したことが分かった。加藤会長は、「判決は我々が訴えていた行政による監査のあり方に踏み込んでいない。また、運転手の労働条件改善についても触れていないので控訴を決めた」と語っている。
 
 同協会と加盟4社が北海道運輸局を相手に、札幌エムケイの参入許可、運賃認可の取り消しを求めた裁判は、9日の判決で原告敗訴になっていた。同地裁は参入許可について協会と原告4社には原告としての適格性がないと判断。また、550円という下限割れ運賃を認可したことについては協会には原告適格がなく、4社には適格性があるものの道運輸局の認可は適正に行われたと退けた。
 
 協会と加盟3社は控訴期限の22日に、それぞれ控訴した。3社は、昭和交通と明星自動車、東邦交通で一審時に原告の1社だった葵交通は自己破産を申請、控訴には加わらなかった。
 
 加藤会長は、「一審はタクシー運転手の労働条件改善や運賃の適正化について触れていないし、我々が求めた監査強化についても答えていない。提訴は経営側を守るために起こしたのではなく、札幌交通圏(札幌市、江別市、北広島市、石狩市)で働く1万2000人の運転手を守るために起こしたものだ。いわゆるエムケイシステムと言われる給与体系の監査についても踏み込んでいないので控訴を決めた」と言う。
 
 札幌エムケイの参入取り消しを求めたこの裁判は、タクシー事業者団体や事業者がエムケイの参入許可と運賃認可を巡って行政官庁を訴えた全国初のケース。この提訴によってタクシー適正化・活性化特別措置法の成立を後押し、業界団体による自主的な減車などが進んだ。
現在、自民・民主・公明の3党合意でさらなる規制強化を目指す“タクシー新法”の準備が進んでいる。参院選後にTPP(環太平洋経済連携協定)や国会議員定数の削減問題などが国会審議された後に提案される見通し。タクシー新法が成立すれば、行政が下限割れ運賃を認可しなくなるほか減車も強制力を持つようになるという。
 
 控訴を決めた札幌ハイヤー協会と3社は、タクシー新法が成立するまで徹底的に戦う姿勢を見せることでタクシー運転手や市民に正当性を訴えていく考えのようだ。


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