2023年12月8日ーー青空が広がる冬の新千歳空港の彼方に、ヤマトグループとJALグループが導入するエアバス321-200P2F型機の貨物専用機が見えてきた。機体は徐々に大きくなり、やがてタイヤがかすかな白煙を上げて着陸、誘導路を進んで目の前の26番駐機スポットに停止した。※動画はこちらの画像↓をクリックしてご覧ください。

(写真は、新千歳空港の駐機スポットに到着したヤマトグループの貨物専用機)
(写真は、コンテナ14基を収納できるメインデッキの貨物室)

 間近に見るグレーの機体の前部と尾翼には、ヤマトグループのロゴマークがあしらわれている。プルービングフライト(運航乗務員の訓練、機材整備、オペレーションの慣熟飛行)を続けている同機の関係者お披露目会が、この日行われた。

 ヤマトグループは、宅急便をはじめ企業間の小口物流の増加、ドライバー不足や残業規制が強化される2024年問題を見据え、貨物輸送の多様化の一環として、2019年から航空機導入を検討してきた。新千歳空港に着陸した貨物専用機のエアバス321-200P2F型機は、旅客機として10年間使われていた機体。コロナ禍で航空機需要が落ち込み、機体価格が下落していた最中に、ヤマトグループは扶桑総合リースと機体のリース契約を行った。この結果、航空機需要が戻ってきた現在よりも、リース料金は2割ほど安いという。

 機体は、今年 3月から4ヵ月間かけてシンガポールのSTエンジニアリングが改修した。STエンジニアリングは、旅客機から貨物専用機に改修する専門会社。座席を外して窓をふさぎ、搭乗口を小さくして胴体部に大きなカーゴドアを取り付けた。
 タラップ車の階段を上って機内に入り、狭い出入り口の先に貨物室がある。窓のないトンネルのような空間が広がっているが、ここには、最大で航空機用のAAYコンテナ14台が搭載できる。下部の貨物室にはAKHコンテナが10台が積み込め、最大で10t社トラック5~6台分に当たる28tが搭載できるという。機体に航空機ではよく見かける「〒」のマークが付いていないのは、日本郵便の郵便物を運ばないからという単純な理由からだ。

 ヤマトグループは、この機を含めて同型機種3機を導入することにしており、他の2機は現在、シンガポールで同様の改修工事を行っている。2024年4月11日からは、新千歳~成田間と成田~北九州を1日2便など計9便を運航し、同年夏頃からは、新千歳~羽田間、羽田~北九州間1日2便など計13便、2024年中には21便まで増やす計画。運航は、JALとJALグループのLCC(格安航空会社)、スプリング・ジャパンが共同運航する。スプリング・ジャパンにとっては、初めての貨物輸送となる。

 ヤマト運輸執行役員貨物航空輸送オペレーション設計担当の鈴木達也氏は、「北海道からの輸送需要は、生鮮品やふるさと納税などで伸びており、ラピダスなど半導体関連企業の進出で北海道には大きなビジネスチャンスがある。貨物輸送機の導入によって時間距離を短縮、国内外に北海道のさまざまなものを運ぶことができるようになる。北海道のビジネスを支援していきたい」と話した。

(写真は、関係者によるセレモニー)

 また同設計部シニアマネージャーの下簗亮一氏は、「今回選んだ機体は、滑走路の距離が短くても離発着できるので、新千歳空港から道内の他空港にもネットワークが構築できるようになっている。広い北海道では道内の航空貨物輸送の需要も出てくるとみている」と話していた。配達時間短縮を希望する利用者を対象に、通常よりも料金をプラスする料金体系を調整中。LCCであるスプリング・ジャパンの運航先に選んだことで運航コストを下げ、空港輸送の競争力を確保する考え。


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