加森観光の加森公人社長やキャリアバンクの佐藤良雄社長など8人で作る「丘珠研究会」などの主催で11日、「丘珠空港活性化シンポジウム」が開催された。会場となった札幌市内の京王プラザホテル札幌の地下プラザホールには380人が集まり、元観光庁長官の溝畑宏氏やフジドリームエアラインズ社長(鈴与社長)の鈴木与平氏、関西学院大教授の野村宗訓氏の3氏による丘珠活性化の提言などに耳を傾けた。シンポジウムの内容を2回に分けて詳報する。(写真は、講演する溝畑宏氏=左と鈴木与平氏)
シンポジウムの冒頭に主催者を代表して加森氏が挨拶。「北海道をもっと活気のある地域にできないかと昨年7月から検討した結果、施設があっても活かし切れていない丘珠空港を活性化することが早道だという結論になった。1500mの滑走路延長は当面難しいにしても、イギリスのロンドンシティ空港は同じ1500m1本の滑走路で年間300万人が利用している。丘珠は、後9億円でジェットに対応できる滑走路の厚さにすることができる。眠っている資産を北海道新幹線よりも早く活用することが必要ではないか」とシンポジウム開催の狙いを語った。
講演では、まず溝畑氏が『北海道観光の魅力を活かせ』をテーマに話し、「日本の製造業は今後5~10年は厳しい試練の時期を迎える。これから日本が再生していくには、観光や農林水産業が核になる。ものづくり以上に、ことづくりが必要だ。北海道の観光が成功しないと日本の観光は成功しない」と述べた。
そのうえで、「北海道は観光の宝庫だが、道民はがつがつしていないので、人の好さはピカ一でも何か物足りない。ブランドがあるのに、付加価値、サービスが十分でないからもったいない。丘珠空港は、札幌中心部に近く、LCCやプライベートジェットで追い風が吹いている。宝物なのに道民は宝物の認識を持っていない。課題を共有して成功のイメージを持てば、みんなの力で障害は突破できる。講演を聞いて『楽しかったな』ではなく、一人ひとりがアクションを起こし、少しずつでも実行していくような日々の努力積み重ねていくことが大切」と参加者に訴えた。
続いてフジドリームエアラインズ(FDA)社長の鈴木氏が講演。物流企業の鈴与が航空会社を作った理由について、鈴木氏は「東京と地方の格差はますます激しくなっている。とりわけ文化的な格差は大きく広がってきた。地方の自立には地方独自の文化が大事。地方と地方の懸け橋になろうとエイラインに進出した」と話した。
エアライン経営に乗り出して一番感じたのがコスト、とりわけ税金の負担だったとし、「燃料などにかかる税金コストだけでも全経費の30%ちかくにもなり、年間で7~10億円の支出だ。HAC(北海道エアシステム)も数億円を燃料税など税金として払っているはずだ。私は、100席以下の航空機にはこうした税の免除をしてもらえないかという運動している。エアラインにとって燃料税などの税金をどうするかが課題」と述べた。
丘珠空港に関して、「道央に新千歳と丘珠の2つの空港があっても全くおかしくない。丘珠は札幌の中心部から至近だし、使い方によっては発展する空港になる。私は、空港の最大のポイントはアクセスの問題に尽きると思う。名古屋地区のセントレアにはLCCが就航するが、FDAが就航している小牧は負けない自信がある。それは小牧の利便性だ。新千歳と丘珠も役割分担で発展の余地がある」と語った。
その上で、「丘珠の何が問題かというと1500mの滑走路ということだが、夏はFDAの機材(ブラジル・エンブラエル社の定員76人のERJ170と同84人の175)でも十分使える。ただし冬は2000m近い滑走路がほしい。ジェット就航には駐機場の舗装強度も少ないのでその改良が必要」として、丘珠の短期的課題、長期的課題を分けて考える必要性を訴えた。
鈴木社長は、「短期的にはFDAの国内チャーター便を夏には何回か離着陸させることは不可能ではない」と滑走路、駐機場の舗装強度がアップすれば就航に前向きな考えを明らかにした。
(シンポジウムの後半部分は次回に紹介する)