JR北海道の路線縮小や駅廃止問題がクローズアップされる中、宗谷本線では「東風連駅」を移設して「名寄高校駅」(仮称)を新設、利用者の増加を図ろうという動きが具体化している。地元自治体が取り組むJR駅存続の新たな駅存続の方法として注目される。(写真は、JR宗谷本線「東風連駅」)
(写真は、仮称「名寄高校駅」の設置場所。左側の校舎が名寄高校)

「東風連駅」を移設して、名寄高校近くに「名寄高校駅」を設置することをJR北海道に要請しているのは、名寄市。現在でも「東風連駅」の利用者の大半が名寄高校の生徒であることから、同駅から「名寄駅」寄りに約1・2㎞移設、「名寄高校駅」とすることで利便性を高めて生徒の利用を増やそうというのが目的。

 市では名寄高校の生徒や地元町内会との意見交換などを実施、移設に同意を得た上で2019年にJR北海道に要請。20年度には約1400万円の予算を確保してJR北海道に実施設計を委託している。「東風連駅」は、無人駅で名寄方面に向かって左側にホームがある。「名寄高校駅」も左側に設置し、ホームの長さは約50m、幅は約2m、「東風連駅」にはない雨や雪を防ぐ庇(ひさし)の対応も行う予定。

 市は21年度の着工に向けて今後、市議会に予算要求を行う。駅の設置は市の単独事業となり新設後の施設は市の財産となる予定。市では駅整備に合わせてコミュニティスペースも設ける方向で、こちらは道の資金を活用する考え。
 名寄高校の生徒数は約500人で、「現在の『東風連駅』を利用する生徒が一定程度いることから、移設により利便性が高まれば利用者は今まで以上に増えることが見込める」(市総合政策課)としている。「名寄高校駅」の供用開始は21年度末を予定している。

 ただ、道教育委員会は23年度にも名寄高校と名寄産業高校を統合して新設校を設けることを決めており、名寄高校の校舎が今後も使用されるか不透明という事情がある。市役所関係者は「道教委がどう考えるかだが、名寄高校の校舎はまだ築10数年で名寄産業高校の光凌キャンパスや名農キャンパスの校舎より新しい。現実的に名寄高校の校舎が新設校として利用されるのではないか」と話している。

 JR北海道の路線縮小や利用者の少ない駅の廃止が課題となる中、名寄市のように自治体負担による駅移設で利用者を増やし駅の存続を図る動きは、道内の他の自治体の参考になりそうだ。


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