札幌交通圏(札幌市、江別市、石狩市、北広島市)で初乗り550円の低料金タクシー事業を行っている札幌エムケイが、営業車を10台増車する申請を北海道運輸局札幌運輸支局に提出した。札幌交通圏はタクシー台数を業界が自主的に制限することができる特定地域に指定されており、事実上増車ができないが、札幌エムケイは「新たな需要を掘り起こしている」として増車申請に踏み切った。全国で特定地域に指定されている交通圏で増車が認可されたケースはない。札幌運輸支局が増車を認めれば全国初になる。(写真は、札幌エムケイの本社)
規制緩和でタクシー事業が認可制から届出制に変わったため、タクシーの供給過剰が続き2009年10月には3年間の時限立法、「タクシー事業適正化・活性化特別措置法」が超党派で成立。全国の主要な交通圏が、供給過剰を抑える特定地域に指定された。
札幌交通圏では、法人タクシーの基準台数5349台から10%減車する自主的な取り決めを行い、札幌ハイヤー協会の加盟社を中心に10年4月から減車に取り組み、タクシーが乗客を乗せて走行する実車率がようやく前年を超える程度まで回復してきた。
札幌エムケイは、09年4月に40台で営業を開始、増車規制前に100台まで増やしていたが業界で減車が始まって以降は増車の動きを“封印”していた。
今回、増車申請に踏み切ったのは、「無線による配車が足りなくなっている」ため。ただ、協会加盟社の減車が進み、ようやく実車率が前年並みを確保してきた段階で、協会に非加盟でしかも一般的な初乗り650円よりも低料金のエムケイの増車が認可されれば、特措法の主旨が有名無実になってしまう。
しかし、札幌交通圏のタクシー業界では「エムケイの増車は認可されてしまうのではないか」という見方もある。と、いうのも、現在の北海道運輸局長が九州の遠賀タクシー社長と昵懇の間柄とされタクシーの自由化に理解があると見られているからだ。さらに、道運輸局の自動車交通部長とタクシー事業を所管する旅客第2課の課長がともに4月で異動する事情も重なる。
通常、増車の申請から2ヵ月ほどで認可される。その間に審査基準に照らした監査が行われることになるが、特措法の施行下、特定地域で全国初の増車認可となるのかどうか(注目を集めそうだ。