札幌交通圏のタクシー業界で、減車効果を高めるために事業者を4グループほどに分けて輪番で営業時間を短縮する、”輪番時短”の考え方が検討されている。曜日を決めてグループごとにタクシーの稼動時間を短くして、実質的に減車と同等の効果を生み出し1台当たりの実車率や運送収入を高めようというもの。札幌交通圏タクシーは、総台数を1割削減する減車を昨年自主的に行ったが、東日本大震災による観光低迷や自粛ムードの高まりによって効果が出ていない。
 
 減車は、タクシー事業参入の規制緩和によって増えすぎた台数を減らす取り組み。札幌交通圏(札幌市、江別市、石狩市、北広島市)のタクシー台数は2002年の規制緩和で大幅に増加、01年度の5599台から08年度には6726台と1127台も増えた。
 
 減車は、2年前の秋口に成立した「タクシー事業適正化・活性化特別措置法」に盛り込まれ、札幌交通圏では昨年夏ころまでに総台数を10%削減してきた。
 
 しかし、減車効果は殆ど出ていない。今年に入って以降の実車率は上半期平均で29・65%、対前年同期間比で99・85%。実働1車1日当たりの運送収入も2万6764円で同99・35%にとどまっている。東日本大震災によって観光客の入り込みが減少したことに加えて、宴会などの自粛が広がったことも、減車効果を減衰させる原因になっている。
 
 タクシー事業者の経営改善を進め乗務員の年収を向上させるためには、もう一段の減車が必要で、「あと20%、08年度比で3割削減しないと効果は出てこない」(タクシー業界関係者)という。しかし、新たな減車は事業者の経営規模のバラツキやそれぞれの思惑もあって難しい。
 
 このため、減車に代わる措置として出てきたのが、輪番時短。札幌交通圏の事業者をおおまかに4グループほどに分けて、月曜日から水曜日までのウイークデーに輪番で営業車の台数を少なくしようというもの。
 
 札幌交通圏のタクシー事業者は、最大手の北海道交運グループや第2位の三和交通(SK)グループ、続く互信グループ、つばめグループ、第一交通グループ、さらに30~40台の小規模事業者に分かれおり、比較的グループ化しやすい業界で、輪番時短は現実味がある。
 
 業界では、8月下旬に開かれる事業者の集まりで考え方を提示する予定だが、実現するかどうかは未定。ただ、減車がこれ以上進まない中で、事業者が経営改善に取り組める選択肢は限られている。事業者各社の危機感が、輪番時短を後押しするのかどうか、新たな取り組みとして注目される。



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