200万都市、札幌市内に残る数少ない戦前の駅舎、JR苗穂駅(札幌市中央区北3東13)。蒸気機関車(SL)が似合うこの駅舎が、来年5月には解体されることが決まった。昭和の香りが漂う駅界隈は、平成から新元号の時代に移るころ、姿を消す。(写真は、JR苗穂駅)
JR北海道や札幌市などは、札幌駅と苗穂駅の間に残る遊休地の有効利用を目的に、苗穂駅を札幌駅方面に約300m移動させて新駅を作る工事を進めている。新駅の線路を隔てた南北の遊休地を再開発することによって都心部に人を呼び込み、コンパクトシティの流れを作る狙いだ。人の流れを変える核になる苗穂新駅は、いよいよ11月17日に開業する。
以前からあった鉄道歩道橋を解体して屋根付き連絡橋として拡張、駅機能も橋上化することによって現駅より3倍の広さを持たせている。
この新駅開業に伴って廃止されるのが現苗穂駅。1935年に建設され、今年で築83年を迎える駅舎はいかにも昭和の趣。壁には、写真のような「建物財産標」が貼りつけられ、昭和10年10月の刻印が付いている。当時の流行だったのか、駅と一体になった民間施設もあって、現在も「カットハウスおおにし」が営業している。
(写真は、建物に貼られている建物財産標)
苗穂駅周辺の用地は、新駅舎周辺の用地を所有していたJR貨物とJR北海道が既に交換しており、移転開業後にJR貨物は現駅の解体作業に入る。その時期は来年5月ころ。駅を利用する人たちと歴史を刻んできた建物には時代の匂いが染み込んでいる。役目を終えるまで残り半年、解体されるまで1年、昭和を体感できる期間は長くない。