札幌市や江別市、北広島市など札幌交通圏のタクシー実車率が3月に前年を割り込んだことが分かった。札幌交通圏ではタクシー総台数の10%を削減する減車が行われたが、東日本大震災による自粛ムードが広がりタクシー利用が減少、減車効果が相殺されてしまった格好だ。タクシー利用の効果的な促進策は見出せず、しばらくは我慢の経営が続きそう。(写真は、北海道ハイヤー会館)
北海道ハイヤー協会がまとめた3月のタクシー輸送実績によると、札幌交通圏の実車率(実際に乗客を乗せた率)は30・58%で、前年3月の31・08%を下回った。また、一日一車当たりの運送収入は2万7838円で前年の2万9087円から1249円、率にして4・3%の減少になった。
タクシー業界では、規制緩和による新規参入の自由化で、タクシー台数が大幅に増加したため、時限立法でタクシー台数を制限できる「タクシー事業適正化・活性化特別措置法」が2年前の10月に成立しており、全国各地でこの特措法に基づく減車が実施されている。
札幌交通圏では、個人タクシーを含めて約6700台の台数のうち、個人を除いた法人タクシーの10%に当たる約500台を昨年末までに減車した。
この結果、減車効果徐々に表れ実車率の上昇が続いてきた。
実車率の推移は、8月101・92%、9月102・78%、10月101・00%、11月101・22%で年末年始の書き入れ時には12月101・72%、1月103・72%となっていた。
3月も前半までは対前年を上回って推移していたが、東日本大震災以降の後半には大きく落ち込みが目立つようになり、結果的に3月は前年を割り込んだ。
3月の実車率は対前年比0・5%減だったが、減車していなければ二桁近い落ち込みになっていた可能性がある。
道ハイヤー協会では2010年度の輸送実績もまとめているが、それによると実車率は29・56%で、対前年度比で0・3%増加、昨年7月から始めた減車が年度を通してみると一定の効果があったことが分かる。
タクシー業界の監督官庁である道運輸局では、業界に対して利用促進に繋がる活性化策の提案を求めているが、道ハイヤー協会では有効な打開策は見出せないとして活性化策の提示に躊躇している。
「福祉車両の増車や電気自動車の導入などが検討されているが、コストがかかるしすぐに改善に結びつかない。かといって、新千歳空港から札幌市内までの定額運賃を打ち出しても7000円程度の値段を設定せざるを得ず、協会非加盟の他社運賃と1000円近くの差が出てしまい現実的ではない」(照井幸一専務理事)
また、道運輸局では新たなポイント制の導入には慎重姿勢で、ハイヤー協会が打ち出せる活性化策には限りがある。
最終的にはさらなる減車しか選択肢は残されていないようだが、足並みは揃いそうにない。
ちなみに、札幌MKは初乗り550円運賃の2回目の改定時期を今月21日に迎える。現在、100台の車両台数をさらに増車する姿勢も見せている。