JALの経営撤退でHAC(北海道エアシステム)の新体制づくりが詰めの段階を迎えている。道は既に新たな出資者になる函館市や釧路市、大空町のほか経済界の首脳にも出資を打診、同時平行で作業を進めている。年度内での新体制発足は可能な情勢だ。


 道の高井修副知事は、新生HACへの出資要請で各自治体や経済界首脳に説明を一通り終えている。高井副知事の率直な感想は、「皆さん、出資には横睨みの印象を受けた。実際、『他の皆さんが理解して出資するのであれば、我々も出資する』という声が多かった」と言う。
 当初は、HAC出資について、「道とJALの責任を我々に押し付けるのか」という意見が多かった。中でも道の出資比率をこれまでの49%から36%に引き下げることに対して、札幌市をはじめて出資対象とされた自治体などからは「せめて49%維持するのが本来の姿ではないか」となかなか理解が進まなかったという。
 ただ、道としては現在のHAC資本金を減資することで責任は一定程度取ることを丁寧に説明、その上で「オール北海道で新しいHACを作りませんか。そのために皆さん協力していただけませんか。道とJALが引き続き過半の株を持ちますので」と自治体や経済界に出資を促してきた。
 その過程で、「ANAに頼めばいいではないか」とか「JALグループのJAC(日本エアコミューター=鹿児島本社)に任せればいいではないか」、さらには「HACはもう辞めた方が良い」と根本を問いただす意見も出ていた。
 ただ、丘珠空港を利用する搭乗客は年間35万人にもなり、医療関係をはじめ札幌と道内自治体を結ぶコミューター航空の必要性は高く、道は新事業プランを立て粘り強く出資要請を続けてきた。
 HACの株価算定をした弁護士は、「JALは引き続きHACの機材3機について補修・点検を行うことで今後も運航に責任を負うことになるから、これまでの経営責任を取る形になる。また、これまでHACは新千歳空港に3機を駐機させて、朝にカラで目的地まで飛ばすこともあり、丘珠集約でコスト低減効果は大きい」と言う。
 現時点でも釧路市が出資に否定的な考えを示しているが、新生HACが年度内に立ち上がるのは確実。新生HACのトップについて、高井副知事は「航空業界のプロでなければだめ。天下りがトップを務めるようなことはしない」と述べている。
 紆余曲折を経て、多くの批判に晒され続けたHAC新生に対する道の取り組みは、道の粘り勝ちという結果になりそうだ。


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