道と札幌市が出資割合の入り口議論で停滞していた北海道エアシステム(HAC)協議がようやく動き出した。丘珠空港を抱える札幌市が、道のHAC再生策に待ったを掛けていたものだが、8月のお盆前から8月末までに既に4回の協議を終えており、概ね対立は解消された。
JALがHACから経営撤退し、49%の出資比率を15%以下にすることから、51%を出資する道は新たなHACを作るために路線や事業計画を練り直す共に新たに出資先として札幌市や函館・釧路市などを想定していた。
札幌市との関係がこじれたのは、道が道議会で先行的に札幌市の出資比率を18%と表明したことに端を発する。上田文雄市長の“抗議文書”が高橋はるみ知事宛てに手渡されるなど、行政機関として道の面目は潰された格好。
道は即座に担当部局長を市に出向かせたため、交渉破談にはならなかったもののお互いにシコリを残しながらも協議継続で合意していた。
札幌市の担当者によると、「我々が要求していた最低10年間のHAC経営計画も8月末に道は策定しており、今まさに金融機関に持ち込んで減資や増資の方法、事業計画の妥当性などについて知恵を借りている状況ではないか」と言う。
道は札幌市が“抗議文書”提出で議論に待ったをかけるまで、HACの丘珠集約については、『札幌市がHACに正式要請すべき』という姿勢だったが、どうやらその姿勢も引っ込めた模様。
道は9月14日から始まる第3定例道議会でHAC基本プランを提出し、札幌市議会も21日からの第3定例会でHACを議題にする予定。道も市も第4定例会には資本金の出資について了承を得て年内に新生HACの姿が決定される見通しだ。
そもそも、HAC問題が道と札幌市の対立にまで発展するほどこじれたのはなぜか。道と札幌市の関係者が異口同音に言うのは、「道のHAC担当部署が総合政策部から建設部に変わったことに原因がある。総合政策部ならもっとスムーズに札幌市との交渉ができたはずなのに、建設部はこういう交渉ごとは苦手。土木現業所などを管理することには慣れていても、新たのものを作り出すネゴには不慣れだから」
道の交渉窓口2トップのうち、宮木康二建設部長はHAC立ち上がりの際の道の責任者で、武田裕二空港港湾局長はHAC出向経験がある。それだけにHACに思い入れがあったのかどうかはわからないが、札幌市と入り口の段階でお互いに感情を害してしまったのはいかにも稚拙だった。
道の特別職OBの1人は、今回のHACを巡る札幌市との対立についてこんな感想を述べていた。
「札幌市との関係がなぜここまでこじれてしまうのか。札幌市のほかにもHACが離着陸する他の道内自治体に集まってもらって、『お願いします』と言えばまとまっていく話なのに…。HAC問題で道は札幌市のミソをつけ、支庁制度改革では町村のミソをつけたし、道は道内市町村からそっぽをむかれ四面楚歌になりかねない」
HAC問題は、道の役割や存在意義を問いただす一面もあるようだ。
(写真は、丘珠空港のHAC出発時刻掲示板)