札幌交通圏のタクシー会社、長栄交通(札幌市)が10月30日に札幌地裁から自己破産手続きの開始決定を受けたが、タクシー業界では車両80台の行方に関心が集まっている。札幌交通圏のタクシー会社では実車率を高めて乗務員の給与を引き上げるため車両台数を自主的に減らす減車に取り組んでいる。しかし、減車率は10%程度ほどで効果は限定的。長栄交通の80台は、果たしてそのまま廃止されるのかそれとも営業権売却でそのまま利用されるのか。(写真は、東区東雁来の長栄交通車庫)
長栄交通は、自動車整備工場の長栄自工がベースになってタクシー参入が自由化された2002年の翌年に設立された。一部の車両の車体にアニメやゲームのキャラクターを描いた「痛車」ならぬ「痛タク」で知られ、12年3月期には約7億2000万円の売上げがあった。しかし、車両台数を増やしたり車庫を東区東雁来に新設するなど借入金負担が重くなり14年3月期は約4000万円の赤字だった。信用調査機関によると、負債総額は約2億5000万円。
業界の関心は、車両80台がどう処分されるかという点。11年8月に同じく自己破産した光星ハイヤーは車両90台の営業権が第一交通産業グループの興亜第一交通に売却された。
破産管財人は、会社の資産を売却することで債権者への配当を少しでも多くするのが責務になっており、長栄交通の藤田美津夫管財人も営業権の売却を検討すると見られる。減車を進めているタクシー業界としては80台がそのまま廃止されれば減車率アップに繋がるため「実車率向上→乗務員賃金アップ」という好循環に結び付くことを期待する声もあるが、業界内の足並みは必ずしもまとまっていない。
乗務員約200人は全員解雇の見通しだが、タクシー業界は乗務員不足のため他のタクシー会社への再就職は比較的容易と見られている。
老舗タクシー会社の経営者は、「資産が自前のタクシー会社でも厳しい経営が続いているので、規制緩和後に新規参入したタクシー会社で車両購入や車庫建設で借り入れをしているところはかなり経営的には厳しい状況だろう。今後も倒産は続くかもしれない」と語っている。