ーー北海道のこれからの展望と、道内経済に必要なことは。
笹原 今まさに、北海道の未来が拓ける大いなるチャンスが到来しています。人口減少や資源の制約、気候変動や技術革新といった日本が抱える重要課題に対して、どのテーマについても北海道がキーになるポジションにいます。GX(グリーントランスフォーメーション)の推進においては、北海道が持つ豊富な再生可能エネルギーを生かした産業集積が期待されます。陸上風力の増設に加え、洋上風力発電においても促進区域の指定により事業化へ動き出します。その電力を活用するデータセンターをはじめとした企業誘致、水素やアンモニアを利用した新たな産業基盤の構築などが想定されます。また、ラピダスによる先端半導体の量産体制が整う頃には、関連産業の集積が進行していると予想されますし、さらには、研究機関や半導体を使用するメーカーの進出の可能性も大きいでしょう。
AIやドローン、センシング技術を活用した産業のスマート化においても、北海道が先進地域になると思います。特に農業や運輸、送客分野において、先端技術の実装を北海道で試行する流れをつくらなければなりません。観光分野においても、またまだ付加価値を高められると思います。客数を追い求めるだけでは、人手不足の中で満足度を上げることはできず、逆に評価を下げることになりかねません。より、お金を落としてくれる観光客を呼び込むには、MICE(企業などの会議、企業などの報奨・研修旅行、国際機関・団体、学会などが行う国際会議、展示会・見本市、イベント総称)やIR(統合型リゾート)は必須であり、北海道にとって、なくてはならないコンテンツです。さらには、アドベンチャーツーリストを満足させる観光メニューの充実も重要です。
そして、最も重要なことは、これらによって生まれる経済効果を道外、海外に流出させるのではなく、道内に取り込まなければならないということです。北海道の財・サービスの域際収支は、年間8000億円の赤字です。所得移転などを含む広義の域際収支は、年間2兆円の赤字になっています。道内の企業が積極的にこうした新たな動きに参入する機会を見出し、道内経済の裾野拡大、地域経済への波及・循環に寄与しなければなりません。
ーー最後に、会長退任後にしたいことは。
笹原 銀行の経営からは離れますが、それ以外でお引き受けしている仕事がいくつかあります。在職中は、十分に役割を果たせておりませんでしたので、反省しているところです。しっかりと役割を果たしていきたい。札幌観光協会会長に昨年就任しましたが、今年度中に観光庁からDMO(観光地域づくり法人)の認可を受けるべく、準備を進めています。イベント開催だけでなく、しっかりとしたDMOの機能を果たしていきたいと思います。DMOとしては後発なので、体制、仕組み、ノウハウを集積をしていこうと、私自身、今燃えています。
道銀時代を含めて、これまで世界各国に出張させていただきましたが、スコットランドのエジンバラに行った時も、世界遺産を見ずに帰国しました。エジンバラには2回訪れましたが、2回目も寄れず、観光らしい観光はできていませんでした。観光に関わる身でもありますから、個人的には、夫婦で見聞を広めたいと思っています。行ってみたいのは、イタリア、スペイン。まずは、かみさん(神楽支店で知り合い結婚)と韓国、台湾から始めて、ハワイとグアムへ足を伸ばしてから、最も行きたいイタリア、スペインに挑戦しようと思っています。(終わり)