北海道信用金庫協会・原田直彦新会長インタビュー、「20金庫の相乗効果を発揮して信用金庫の存在感高める」

金融

 ーーラピダスやGX(グリーントランスフォーメーション)について、信金業界との関わりを、どう見つけていきますか。

 原田 ラピダスの稼働によってどのような商機が出てくるかについての情報を、地域のお客さまに繋げられるかどうか、提供できるかどうかが、信用金庫の役割でもあります。建設会社などは、既に積極的に関わりを持とうと自ら動いています。自立的に商機を求めることができる企業以外に、ラピダスに関係する情報をいかに発信していくかが、信用金庫には問われます。

 ラピダスの人材採用強化で、旭川は人材不足になるのではないかと危機感があります。ただ、今までも先端分野の優秀な人材は本州に向かっていました。そういう人たちが、北海道にとどまるということにもなるので、北海道全体としては、プラス効果があるかもしれません。それにしても、石狩~苫小牧のラインに人材が集中し過ぎだと思います。データセンターなどは、自然災害が少ないということからも、旭川の立地が絶対的に良いと思います。

 ――GXに関しては、どうですか。

 原田 現実に、宗谷や留萌、道南では、風力発電が動いていますし、根室・釧路地区は、太陽光発電施設がかなり稼働しており、地域の信用金庫もこれらの分野で関わりがあります。洋上風力などGX関連について、道銀も北洋も『よろしくお願いします』と言っていますが、融資に加わるだけなら受け身になってしまいます。積極的に関与できる分野を道内金融機関が一体になって見いだしていきたい。

 ーー信用金庫の札幌進出は一段落したと思います。

 原田 札幌圏は、信用金庫の支店だけでいうと、地元の北海道信用金庫さんも含めて100店舗を超えています。確かに、札幌には地方とは違う資金需要がありますが、不動産はミニバブルの要素もあって、今まで通りにはいかないのではないか。いずれにしてもこれ以上、札幌進出が進む状況ではないと思います。

 ーー人口減の地方で、信用金庫と地方銀行との関係は。

 原田 道銀や北洋とATM(現金自動預け払い機)連携をしている信用金庫が数金庫あります。そうした中で、道銀がセイコーマートの店舗にATMを置くのは良いことだと思います。究極をいえば、ATMは道銀、北洋など皆同じだったら良いと思います。ATMは、保守管理が大変で、紙幣が詰まったり不具合が生じたりした時に備えて、各金融機関が、警備会社と提携していています。そうした負担が少なくなると良いのではないかと思います。いずれにしても、お金を引き出すだけの魅力はどんどん薄れています。旭川に進出している信用金庫は6金庫で、15、6店舗ありますが、シェアもほぼ固まっています。今後は、違う信金間での店舗内店舗も出てくるのではないかと思います。

 ーー道内信用金庫の合併については。

 原田 今後、合併の必要性が出てくるのかどうか。先ほど述べた共同化、共通化が一定程度進んでいて、残った分野の合理化をにらんで合併しても、その効果はどうなのかというのがありますし、地方の赤字店舗ばかり残ったところで、合併しても統合効果は発揮しにくい。ただ、人手不足が要素になる合併は、今後はあるかもしれません。

 ーーゼロゼロ融資の返済が始まっていますが、与信費用の増加が懸念されます。

 原田 本当に立ち行かなくような先には、各金庫ともに貸倒引当金をほぼフルで積んでいると思います。ゼロゼロ融資の延滞が沢山出てきたら別ですが、借り換え保証など、いろんなものがあって、厳しい状況とは言えません。ただ、今後は、(破綻などが)出てくる可能性があります。2025年度以降から、立ち行かなくなる企業が顕在化してくるかもしれません。

 お客さまの方を向いて、何を頑張るのかというところをお客さまは見ています。先ほど述べたように職員が“腹落ち”した形での仕事と、各金庫の収益、お客さまを向いて実行していくことのバランスが難しい。貸出金利が上がったとしても、それ以上にお客さまに何ができるか、どんなビジネスの種を提供できるのか、どういう本業支援ができるのか、という点をより強化できるかどうかだと思います。金利高局面やゼロゼロ返済のスタートは、信金の存在感を改めて高めるチャンスでもあります。

 ーー本日は、ありがとうございました。

1 2 3 4

関連記事

SUPPORTER

SUPPORTER