北海道信用金庫協会・原田直彦新会長インタビュー、「20金庫の相乗効果を発揮して信用金庫の存在感高める」

金融

 ーーゼロ金利から金利高局面を迎えていますが、信用金庫業界への影響をどう見ていますか。

 原田 低金利下で、流動性預金の比率が高くなっており、道内の信用金庫では、流動性預金が平均5割を超えています。それら普通預金は待ったなしで、金利高局面で金利を上げなければなりません。定期預金の金利も徐々に上げていかなければならない。このように、預金金利は、貸出金利よりも先に上がっていきます。預金量のうち、どれだけ貸し出しに回しているかを示す預貸率の割合によって、各金庫の余資は違いますが、当金庫(旭川信金)では、貸し出しと有価証券と預け金が3分の1ずつくらいです。貸し出しは、短期プライムレートを上げたとしても、次の書き換えの時からの金利引き上げになるので、タイムラグがあります。

 信金中金に預けている預け金は、市場に連動して上がるため、ほどなく上がっていくでしょう。とはいえ、市場運用利率と貸出金利は、かなり違います。貸出金利は、いくら低金利といっても市場金利よりは高い。もっとも、当金庫は、「旭川金利」といわれるくらい金利が低いですが、金利高局面では、低い方が上げやすい面もあるのではないか。

 金庫によっては、貸出金利が2%を超える金庫もあるので、それぞれ状況が違うと思いますが、金利高局面の経営は、あまり良い側面はないのかもしれません。自動変動金利で、短プラを上げれば貸出金利も上がる部分もありますが、取引先と相対で交渉しなければならないこともあります。そうすると、駆け引きの要素もあって、思ったほど上げられないということもあります。資金需要は、それほど高いわけではないので、難しい局面です。

 ーー取引先と金利を上げる交渉をしたことのない職員も多いと聞きます。金利引き上げの交渉の研修も必要です。

 原田 教育といっても、教える方もあまり分かっていない世代です。若い店長なら、金利がある時代のことを知らないでしょう。金庫職員の多くは、金利のある世界を経験したことがないのではないか。

 ーー金利高になっていけば、各金庫の収益に差が出てくる。

 原田 それは間違いないでしょう。2024年3月期決算は、各金庫ともに総じていえば、思ったよりも良い決算でした。人手不足の問題も顕在化しており、金庫によっては店舗を減らしたり、店舗内店舗にしたり、いろんな対応をして、先んじた経費削減策を実行しています、人手不足で、そうせざるを得ない部分もありますが、それが経営効率化という点で効いているうちに、金利上昇の対応をどう取っていくかがポイントのように思います。経費節減が目いっぱい進んだ金庫は、厳しい局面が出てくるかもしれません。

 ーー資金運用の環境は、どうでしょう。

 原田 余資運用の環境は、とても難しいと思います。株は乱高下していますし、為替も10円くらいは平気で動きます。国債もそれほど金利が付きません。信金中金の預け金の金利も、上がったり下がったりします。いつの時代も余資運用の環境は難しいものですが、金利上昇に伴うことでいうと、やはり預金者に還元するような預金金利にしないといけないと思います。企業も、貸出金利が低い水準に慣れすぎるのは、いけないと思います。今は、そういう意味では、正常化の途中だと思います。

 仮に預金金利が3%、貸出金利が5%になったとすれば、国内の企業は大変な状況になるでしょう。しかし、そんなことにはならないでしょう。また、物価上昇やベースアップが今後2年、3年と続いていくとすれば、どんなことになっていくのか、想像がつきません。

 ーー信金業界の今の状況は、原田会長の43年間に及ぶ信金人生の中でどんな状況だと判断していますか。

 原田 こんなペースで人口が減って高齢化することは、誰も経験したことがない。どのくらいで、落ち着いてくるのかが見通せない。旭川市は、人口が3割強ほど減って25万人になるといわれています。IT化が進んで、人手と仕事の量のバランスがどの段階で均衡するのか、誰にも分かりません。ただ、価格転嫁ができて、モノの値段が上げられる環境というのは、私の信金人生の中では初めてのことなのかもしれません。そこは変わったと思います。

 企業は少ない人手でも、今以上のことを実践出来るようにしないと、成り立っていきません。DXは、中小企業ほど必要だし、必ず導入していかないければならないでしょう。

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