北海道内20信用金庫の2023年9月末の仮決算が、このほどまとまった。一般社団法人北海道信用金庫協会(事務局・札幌市中央区)が集計したもので、それによると、これまで主として有価証券売却などで益出し原資を創出していたものが、貸出金の伸びと貸出金利の向上、いわゆる本業による利益が、全体の利益向上に結びつく構造になってきたことが分かった。(画像は、一般社団法人北海道信用金庫協会がまとめた2023年9月末仮決算速報資料から)

 コロナ禍の影響を最小限に抑えるための無担保無保証のゼロゼロ融資の返済が、既に始まっている貸出先が多いが、各信金で目立っているのが、ゼロゼロ融資の繰り上げ返済。万一のために借りていた企業が、平時経済に戻りつつある中で、寝かしていたゼロゼロ資金を一括返済しているためだ。

 また、経済がコロナ前に戻りつつある中で、新たな資金需要も出ている。札幌圏では、不動産向け融資が一部信金では堅調なほか、観光向け融資も戻りつつある。そうした中で、各信金が貸出先の債務者区分をランクアップ、それに伴って貸倒引当金を減少させているため、戻り益が発生して利益の押し上げ効果をもたらしている。また、引き当ての査定方法を変更した信金もあって20信金の与信関係費用は9億3600万円減少、戻り益になった。戻り益は、前年9月仮決算と比べて6億円以上増えた。

 一部信金では国債の利回り低下を受け、国債を売却して損を顕在化するところもあり、国債に関する各信金のスタンスの違いも表れた仮決算となった。当期純利益で見ると、11信金が前年仮決算より増益、8信金が減益、1信金が同額となった。20信金全体の当期純利益は、105億6600万円で同3・0%(3億700万円)増加した。

 2024年3月期は、金利上昇に伴う国債価格低下がさらに懸念され、有価証券運用の見直しが進む可能性があるほか、一部信金では、債務者区分のランクダウンによる与信費用増加も想定される。例年通りの着地となりそうなものの、各信金の個性が反映された決算となりそう。


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