ーー信用金庫業業界にとって、地域商社は新たなビジネスの方向ですか。
遠藤 そこまでは言い切れないと思います。それぞれ20信用金庫にはエリアの特徴があって、その地域のキーマンとなる皆さんの個性も違うなど多様性があります。それこそが価値の源泉です。それぞれのエリアで自立を考えていく時、それぞれの地域の個性に深く合わせることが大切。地域商社の方向にみんなが進むのではなく、各信用金庫が持つそれぞれの独自性を尊重する方が良いと思います。
ーー地域とともに生きる姿勢こそが、信用金庫の真髄ということですか。
遠藤 信用金庫は積み上げ型です。収益を上げることにあまりがつがつしていない信用金庫の方が、ブレずに安定的に業務を遂行できます。上場している銀行は、ROE(自己資本利益率)など株主の視線がどうしても強い。私たちにはそれがなく、儲けるためというよりも、取引先や地域を守るために、自分たちがしっかりしなければだめだという意識が強いと思います。結果的に、急がば回れで皆さん経営体力をつけてきました。ある意味では、以前によく言われた日本的経営の考え方が信用金庫には根付いています。
ーー広域分散型の北海道ですが、20の信用金庫は多くないですか。
遠藤 信用金庫らしさの発揮という意味では、各地域コミュニティの課題や人の繋がりなどを含めて理解していることが、目に見えない信用金庫の財産だとすると、その価値を揺るがせないことが大事だと思います。結果として数は、今までもそうでしたが、いろいろな情勢によって変化しますから、(減るかどうか)分かりません。ただ、少なくなれば良いかといえば、市町村合併や学校の統廃合を見ても土地のナラティブ、物語が消えてしまう懸念があります。物語が単一になって気がついたら、北海道には札幌の物語しかないということは避けなければならない。駅の名前もそうですし、地名はすごく大切。価値観の多様性を失いすぎると、逆に命が短くなることもありますから。いずれにしても統合と分散は、いつも行ったり来たりするのが歴史の宿命です。
ーーまさに地域経済を支えているのは信用金庫ですが、そこをもっとアピールした方が良いのでは。
遠藤 2023年秋に、信用金庫をもっと知ってもらおうと事例発表のようなシンポジウムを札幌で行う予定にしています。北海道全域の発展のため、これまで20信金がやってきたことや目指していること、その根っこに流れているものなどについて紹介した上で、研究機関や大学、スタートアップ関連などと新しい関係を構築していく一助にしたい。
ーー地方銀行や第二地方銀行との提携について。
遠藤 道銀の兼間祐二頭取が就任早々、信用金庫、信用組合との連携方針を表明されたことに少し驚きましたが、明快にそう言われたことは良いことだと受け止めています。北洋銀行の安田光春頭取も、地方では信用金庫の基盤が大切だと、お互いに補完する関係ということを表明されています。地銀も第二地銀も、自分たちの経営と北海道の将来を考えた場合、そうした立ち位置が良いという判断には合理性があると思います。
ーー連携の方法にはどんなことが考えられますか。
遠藤 さまざまな提案が各金庫にきています。年に1回、北洋銀と道銀のセミナーがありますから、それぞれの理事長と両頭取はコミュニケーションが深まっており、連携方法にはさまざまなバターンが出てくると思います。営業体制、店舗体制をどう効率化されるかで、具体的な連携が進んでいくのではないでしょうか。信用金庫は地域限定で、合併でもしない限り本店所在地が変わることはありません。地域への責任感がありますから、それぞれの信用金庫が地域の当事者として一生懸命に頑張り続けることは揺るがないと思います。その時に、北洋さんや道銀さんが持っている別の意味での高いレベルの技術を、各地域でお借りすることもあるかもしれません。(終わり)