北洋銀行と北大との包括連携協定に基づく市民医療セミナーの今年度最終セミナーが15日、北洋大通センター4階のセミナーホールが開かれた。北大大学院医学研究科がん予防内科学講座特任教授の浅香正博氏が『タバコとアルコールのつきあい方』と題して約1時間講演、会場には市民約60人が参加して耳を傾けた。(写真は、講演する浅香教授と熱心に聴講する参加者)
浅香教授は、タバコとアルコールの歴史からひも解き、「タバコは1500年前から南米のマヤ原住民の間で吸われていたが、16世紀ころにヨーロッパに普及し、紙巻タバコが大量生産できるようになった20世紀から庶民の間にも普及。第一次、第二次大戦では兵士たちに配給され緊張を和らげるなどタバコと戦争は深い関わりがある。一方、アルコールは1万年以上前からあったとされ、タバコとの歴史の長さが全く違う」と語り、タバコは当初、薬の一種と見られていたが20世紀になって肺がんと密接に関わっていることがWHOによって指摘され、アルコールの場合は少量なら薬、大量は毒になると呼びかけた。
タバコには4000種の化学物質が含まれ、そのうちの60種は発がん物質で喫煙者は吸わない人に比べてがん発生は1・5倍にもなるという。「肺がんの70%は喫煙から起こり、がんの芽ができて、がんになるまでに20年位かかる。タバコをやめて元に戻るのにやはり20年位かかる。なるべく若いうちにタバコをやめた方が良い」訴えた。
また、心血管障害や脳卒中、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病との関わりも指摘されているとした。
タバコの税収入は2兆2700億円(2007年度)で、JTの筆頭株主は財務省。「税収入の大きな比重を占めているものの、タバコによる健康被害で支出される医療費は年間3兆円を超えておりタバコを廃止しても財政には影響しない」(浅香氏)
アルコールについては大瓶1本、日本酒1合、ウイスキーW60㍉㍑、焼酎0・6合、ワイン200㍉㍑グラス2杯なら健康に影響を与えない一日の量だとし、「それでもアルコールが炭酸ガスと水に分解されるまで体重70㌔の人なら日本酒1合で3時間かかる。3合飲むと9時間かかるわけで、アルコール代謝には非常に時間を要することを知って欲しい」と述べた。
飲酒と関連する病気として急性アルコール中毒アルコール依存症、肝疾患、すい臓疾患があり、アルコールを分解する過程で発生するアセトアルデヒ
ドが体内に残ったままだと発がん作用が強くなる。「日本人はアセトアルデヒドを分解する脱水素酵素が十分でない人が多い。飲酒してすぐに赤くなる人はこの酵素が少なく食道がん、口腔がんになりやすい」という。
浅香教授は、食道がんを予防するには喫煙とやめてアルコールを適量にすれば90%は可能だと強調した。
「タバコと飲酒は、1+1が3にも5にもなるリスクがある。タバコは即刻やめて飲酒は適量に、週に数回は休肝日を設けるのが上手なつきあい方だ」と締めくくった。