北海道銀行は31日、札幌市内のロイトン札幌で植物工場と北海道の未来を考えることをテーマに「アグリビジネスフォーラム2012」を開催した。植物工場に焦点を当てたフォーラムとしては、昨年に続く2回目。堰八義博頭取は、「北海道は半年間雪に閉ざされる。通年で農作物を生産できる植物工場こそ最も北海道に適した手法だ」と期待感を前面に押し出した。フォーラムでは、髙木勇樹元農林水産事務次官による基調講演やセミナーのほか、農業関連の先進技術を集めた企業や大学のブース、21コマの展示も行われた。(写真左は、展示ブースを視察する堰八頭取(左)と増山道経産局長(左から2人目)、写真右は髙木氏)
フォーラム開催に先立って行われた開会式では、堰八頭取や来賓の増山壽一北海道経済産業局長、道の竹林孝経済部食産業振興監が挨拶。
堰八頭取は、ものづくり産業で北海道を牽引していくことについて、製造業の工場誘致では限界があると指摘。「国内のものづくりが空洞化している中で、果たして北海道に工場を作ってくれるのか。現実的には難しい。そうであれば、ものづくりの一つで北海道が強い農業分野を伸ばしていくことが有益だ」と強調した。
しかし、農業は系統団体がパッケージで対応しており、市中銀行がこの分野で融資を拡大したり先進技術の提案をするのは難しかった。「法律改正もあって農業法人が多く設立され、市中銀行も参入できるようになった。現在、道内には2600法人あるが、その中で約200法人は異業種が農家と連携した法人。さらに純粋な異業種からの参入は30法人」と述べ、農業法人向け融資や技術提案で系統団体とは違う側面から北海道農業のレベルアップに取り組んでいくことをアピールしていた。
また、増山道経産局長は、「農業を持続可能性のある産業にしていくためには、冬期間の対策が不可欠。植物工場は通年雇用にもつながり新しい農業を開くことになる」としたうえで、道内に豊富に存在する再生可能エネルギーと結びつけることを提案、「環境負荷ゼロの農作物で認証制度ができるのが楽しみ」と経産局長らしくエネルギーと農業の接点をより太くしていくことに言及した。
開会式後の基調講演では、元農水次官の髙木氏が「日本における北海道農業の可能性」をテーマに1時間話したが、高木氏は今後北海道農業が飛躍していくためには乗り越えるべき点があると指摘、日本農政の事実上のトップだった視点から次のように述べた。
「北海道農業の本当の危機は、手厚い保護対象品目が多く、守られていることに甘んじてしまって活力が失われてしまっている部分があることだ。また、農業法人の数が増えているが、全般的に言うと系統依存体質が強い。組合勘定がそれを象徴しており、かつては良いシステムだったが、現在は自立性、自己責任ということで問題がある。もう一つは、農業を産業として経営し持続させていく必要があるのに、リスクは系統団体が過剰に負ってしまっていること。これら3点は北海道農業が発展していくうえで乗り越えなければならない点だ」と系統依存体質の問題点を大胆に指摘した。
フォーラムでは、「データに基づく計画的・安定的な農業生産」(こもろ布引いちご園倉本強代表取締役)、「植物工場ビジネスの実践と成功」(グランバ阿部隆昭代表取締役)、「最新の太陽光利用型植物工場『IGH』の紹介」(イシグロ農材開発部大門弘明開発課長)、「北海道における植物工場の可能性」(村瀬治比古大阪府立大大学院工学研究科教授)をテーマにしたセミナーも開催された。