北洋銀行と北海道大学病院地域健康社会研究部門・北海道大学大学院医学研究科がん予防内科学講座は共同で市民医療セミナーを開催しているが、第4回テーマの「食中毒の現状と予防」が10日、北洋大通センター4階のセミナーホールで行われた。講師の石黒信久北大病院感染制御部診療教授は、ノロウイルスやカンピロバクター、サルモネラ菌によって引き起こされる食中毒の原因と予防法などについて解説した。講演後にはノロウイルスの集団感染を防ぐにはどうしたら良いかという質問も出され、参加した市民約60人は食中毒予防の第一線研究者の説明を熱心に聞き入っていた。(写真は、講演する石黒信久氏)
 
 2011年の食中毒発生件数は、厚生労働省の食中毒情報によると1062件で原因別ではカンピロバクター、ノロウイルス、サルモネラ菌がベスト3で66%を占めている。患者数で見ると、全体2万1616人のうちノロウイルスが39・9%でトップを占め、2番目にサルモネラ菌の14・2%、3番目にウェルシュ菌12・9%と続く。
 
 石黒氏は、「1970年代まではブドウ球菌や腸炎ビブリオ、サルモネラなど菌の付着でその菌が増殖して起きる場合が多かったが、食品の温度管理や低温での流通保管が進み、最近は少量でも食品に菌が付着していれば食中毒になるノロウイルスや0157など腸管出血性大腸菌、カンピロバクターによるものが多くなっている」と説明。食中毒の原因物質が変化してきたのは、コメや魚を食べることが多かった70年代から洋食や肉、卵料理、生食を食べる機会が増えるなど80年代以降に食生活が大きく変化してきたためだとした。
 
 O157など腸管出血性大腸菌による食中毒は、牛のと畜・解体処理工程で皮を剥ぐ時や内臓摘出時、床面からのはね水、作業施設や作業台、器具等が汚染源となるケースが多く、「塊肉の表面は有害な微生物で汚染されている可能性があるが、内部は大丈夫。ビーフステーキなどは表面を75度で1分以上加熱すれば中はレアでもOK。ハンバーグステーキも中央部が盛り上がり肉汁が凝固すれば中心部は75度になっておりOK」と石黒氏は語り、「ステーキ店ではコックさんがタイマーを使って肉の加熱時間を測っているところもある。温度管理がしっかり配慮されている店も多くなってきた」と述べた。
 
 鶏肉に多く含まれているカンピロバクターは、65度以上で数分間加熱すれば良いが、鶏肉を生食するとカンピロバクターによる食中毒リスクが格段に高まるとした。
 
 そのほかにも、卵の賞味期限はサルモネラ菌の増殖が起こらない期間を基準にしていることやノロウイルスによる感染は、カキや貝によるものが全体の20%に満たず大半が原因不明と語り、人から人への伝播力が極めて強いとした。
 
 家庭でできる食虫毒予防については、「下準備、調理、食事の際に食事の前に手を洗うこと。洗い残す場所は、指の先、指の間、親指と大体決まっているので特にこの部分を重点的に洗うこと」とアドバイスしていた。
 
 講演終了後に、会場から「学校でのノロウイルス集団感染を防ぐにはどうしたら良いか」という質問があり、「発生したらトイレを別々に使うなどすることがある程度は有効」と石黒氏は答えていた。
 
 次回は10月16日に「胃がんで亡くならないために」をテーマに北大大学院医学研究科がん予防内科学講座特任教授の浅香正博氏が講演する。問い合わせは、北洋銀行法人部(電話011・261・2579)。


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