北海道信用金庫協会の北村信人会長(大地みらい信金会長)は、道内23信用金庫の貸出金のうち、証書貸付と言って本来融資先が設備投資など使う長期貸出金の中身が短期貸出金から振り替わったケースが多いとして、設備投資向けは減少していることを明らかにした。短期貸出金は運転資金などに使われ証書貸付の対象にはならないが、短期貸出金の返済、貸出が繰り返されることで固定化、長期貸出金として振り替えられて証書貸付にカウントされているケースが多いという。(写真は、北村信人氏)
 
 道内23信金全体の貸出金推移を見ると、2008年12月の3兆1384億円から09年12月に3兆971億円、10年12月に3兆592億円になり直近の11年10月では2兆9794億円と3兆円を割り込んだ。
 
 しかし、一方で貸出金の9割以上を占める証書貸付は堅調に伸びている。長期の証書貸付の推移を見ると、08年12月2兆3951億円、09年12月2兆4469億円、10年12月2兆4582億円、11年10月2兆4416億円となっており、約3年間で465億円の伸びを示している。伸び率にすると、約2%。
 
 貸出金の減少は、手形貸付や割引手形、当座貸越の減少によるもの。実際、手形貸付は08年12月の4253億円から11年10月には3095億円に、割引手形は同819億円から同429億円に、当座貸越も同2360億円から1853億円に減少している。
  
 一般的には、証書貸付が設備投資などに向けた長期貸出金、手形貸付や割引手形、当座貸越が運転資金や原材料仕入れのための短期貸出金に大別できる。
 
 このため、証書貸付の堅調な伸びは、信金の主な融資先である中小企業の設備投資が低迷する経済状況の中でもそれほど衰えていないという見方もあるものの、証書貸付の中身は運転資金など短期貸出が長期固定化されて長期貸出に振り替わり証書貸付の伸びに繋がっているケースが多く、本来の設備投資向けは減少しているという。
 
 北村会長は、「貸出金の中で長期貸出のウエートが増え続けることは、本来は信金にとって資金の流動性から見て問題。しかし、預金は2%前後で順調に伸びており預金のうち貸出に回す預貸率が業界全体で50%を切っている現状では、流動性は十分確保されており長期貸出の増加はそれほど気にしなくても良いレベル」と語った。
 
 問題なのは、長期貸出の本筋とも言える中小企業向け設備投資資金がさほど伸びていないこと。
 
北村会長は、「地方は、少子高齢化による人口減少、経済のパイ縮小が進んでいる。信金にとって事業所数の減少は深刻でどの地域も10年前に比べて事業所数の2割減という状態で、中には3割も減少している地方もあるだろう。事業所数の減少は雇用の減少、人口流出につながりコミュニティそのものの崩壊に繋がりかねない」と危機感を募らせている。



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