農業分野の融資拡大や参入サポートに力を入れている北海道銀行は10日、札幌市内のホテルでアグリビネスの最新技術である植物工場をテーマにした展示会とセミナーを開催した。農業者や農業参入を狙う建設、食品業界などから約1000人が集まった。金融機関が、農業に的を絞って大規模なフォーラムを開催するのは初めて。道銀は、異業種からの農業参入や既存農業者の生産革新を促し、北海道農業の競争力アップにつなげていく考え。(写真はセミナー会場と展示会場)
 
 展示商談会には、ホーマックや北進農材、土谷特殊農機具製作所など道内6社、3団体、2大学のほか道外8社、1大学が植物工場に関連する技術やノウハウを出展。植物工場の最新技術が一堂に揃う機会は道内初めてとあって参加者の関心は高く、各ブースでは担当者と熱心に話し込む姿も見られた。
 
 セミナーでは、植物工場を実際に稼動させているメーカーや農業生産法人がそれぞれ講演し植物工場の現状を紹介した。
 
 森久エンジニアリングの森一生代表取締役は、「植物工場で一番大事なのは出口戦略。生産した葉物野菜をどう捌くか、出口=売れ先を整備して植物工場を作ることが必要になる」とし、「現代農業はハイリスクローリターン。露地栽培では、天候によって収量が不安定だし、担い手不足で農業に不慣れな人が肥料をまきすぎて土壌汚染を引き起こしたり、連作障害が発生する。植物工場は収量が安定し、トレーサビリティも万全。普及しなかったのは電気代が高くついたためだが、電気代をセーブする技術も開発されている」と語った。
 
 6月初めには宝塚市逆瀬川の空き商業施設の地下330坪のフロアーに市民農園として植物工場がオープンしたことも紹介した。
 
 また、北海道で植物工場を導入するメリットとして、「夏場には北海道で作れない野菜類を、冬場には夏場にしか作れない野菜類を生産すればメリットがあるのでは」と訴えかけた。植物工場ではレタスのような葉物野菜が中心だが、様々な野菜類が生産できるようになってきていることも明らかにした。
 
 みらい代表取締役の嶋村茂治氏は、同社の植物工場が全国9ヵ所で稼動していることを紹介、「我々のサーバーで遠隔管理している。南極の昭和基地でも我々の植物工場が稼動しており、遠隔地でも支障なくコントロールできる」と述べたる「植物工場では、計画生産が可能で露地栽培の50倍の生産性、つまり50分の1の土地で露地栽培並みの生産を行える。これからの農業はコストをコントロールしたものが勝者になる。広大な土地を動き回る時間ロスや生産した農作物から土を洗い落とす作業など、従来の農業はコストの塊でしかも3K。植物工場は、クリーンでクリア、クールの3Cで労働環境も良いから高齢者でも負担が少なく働ける」と将来性は非常に高いことを強調した。
 
 嶋村氏は、消費者が野菜を選ぶ基準は、見た目が綺麗で安全なものだとし、「これまで美しくするには農薬を使わなければならなかったが、植物工場は農薬を使わずに安全に美しさを持たせることができる。美しさは今後のビジネスの重要な鍵。植物工場は価値を作ることができる」とした。
 
 参加者からは、「光源として蛍光灯の代わりにLEDは使えないのか」「停電になったら植物工場は安全か」など具体的な質問も寄せられていた。

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