北海道信用金庫協会・増田雅俊会長インタビュー「これからの信金経営」

金融

 地域に根差した信用金庫は、行政や民間企業を橋渡ししながら地方創生を進める中核的な役割を担っている。各地域の事情をもっともよく知る各信金は地域経済のリード役であり裏方役でもある。道内7空港の一括民営化やJR北海道の路線縮小問題など地方が絡む問題は喫緊の課題になっている。そこで、各地域の信金はどういうスタンスで地方経済に向き合っているのか、北海道信用金庫協会会長で稚内信用金庫理事長の増田雅俊氏にこれからの信金経営をテーマに聞いた。
IMG_8830《ますだ・まさとし》1953年11月、宗谷郡猿払村生まれ。72年稚内高校卒、78年3月北海道大学法学部卒、同年4月稚内信金入庫。2001年常勤理事業務推進部長、04年6月常務理事総務部長、06年6月から理事長。稚内商工会議所常議員(三号議員)、北海道旭川方面公安委員会委員などの公職多数。

 ――景況をどう見ていますか。

 増田 日銀のレポートを見ていると、だんだん回復の表現が強くなっている。実際、統計数字を見ると、確かに悪くない。しかし言われるほど景気は良くないと皆さんが口を揃える。原因のひとつは、今の景気に慣れてきていることがある。金利にしても賃金にしても減らないし上がりもしない。横ばいでトータルの数字だけが良くなるから、個々には変わっていないように感じる。しかし、悪くなっているという人はほとんどいない。実際に景気は良いと思う。

 ――稚内信金の地盤である宗谷地方の水産、農業などの状況はどうですか。

 増田 北海道は各地域で主力産業も違うが、総じて漁業はそれなりに獲れていて、金額ベースの水揚げは史上最高という魚種がある。農業も今年は仕上がりが良い。1次産業が良いと北海道全体の数字は良くなる。観光はデータが示す通り好調。空港やJRの混雑やバスが足りない状況も続いており、ホテル稼働率も上昇している。
 稚内も数年ぶりにホテル需給が引き締まり、夏場はホテルが取れないケースが増えた。久しぶりにそういう話を聞いた。利尻、礼文の観光客の入り込みもいつもより良いと聞いている。

 ――今の景況感を踏まえつつ近い将来の景況予測は如何ですか。

 増田 人口減少は、物理的にパイが減るので影響するのは間違いないが、悲観材料ばかりでもない。特に北海道は将来に向けてかなり良い環境になると思う。気候が変動するのが一番の理由だと私は見ている。温暖化は北海道にとってみればプラスに働く。農産物はもちろんのこと、2次産業も工場を北海道に立地したほうが明らかにコストは下がる。自動車部品産業、IT産業関連も札幌を中心にどんどん進出している。今後、他の製造業も大きな設備を必要とする場合、北海道に視線が集まるだろう。30年、50年単位で見たら、北海道は非常に優位性がある。国民の数は減っても、北海道民の数は減らないというのが私の持論だ。

 ひと昔前、企業誘致では相手先に出向いてお願いをして来てもらっていた。今後は向こうから進出したいと言ってくるだろう。そういう時に排除しないことが大事だ。どこの企業だろうが、『どうぞ』と歓迎する。場合によってはインフラ整備もする。
 情報通信の環境が良くなったから、どこで仕事をするかはあまり関係がなくなっている。一番の問題はアクセスの時間。空港が近くにあるかないかで優位性が違ってくる。北海道は13の空港があり7空港の一括民営化はチャンス。民間委託によって規制が緩和され、今までできなかったことができるようになる。

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