北海道財務局は15日、「平成28年度金融仲介の質の向上に向けたシンポジウム」を札幌市中央区の札幌国際ビル8階国際ホールで開催した。副題は、地域金融機関における顧客との「共通価値の創造」の構築~金融仲介機能のさらなる発展・進化に向けた取り組みについて~で、金融関係者など約130人が参加した。(写真は、顧客との共通価値創造の構築について議論したパネルディスカッション)
基調講演は、ルートエフ代表取締役で金融庁参与の大庫直樹氏が『バンカーはコンサルタントになりえるか~ある企業再生案件に触れて感じたこと~』をテーマに話した。同氏は、ある県の豆腐製造業者X社の再生ケースを紹介。X社は7年連続の経常赤字でキャッシュフローもマイナスのほか、7年間債務超過の状況だった。
X社の社長には融資を受けて最新の豆腐製造機械を導入すれば再生できる確信があった。しかし、メーン銀行の担当者に何度融資の要請をしても門前払い。
その社長はついに昔馴染みの行員がいる本部に直訴。その行員はすでに役員になっておりX社の社長と面談してこう伝える。「決算書を見る限りは難しいが、話を聞きましょう」。そのうえで、この金融機関は、社長の主張を客観的に検証する作業を行い、実際に豆腐製造機械メーカーとその機械を使っている他県の豆腐製造業者に話を聞く。
さらに担当者同士で飲みに行き、メーカーの担当者が席を外した際に他県の豆腐製造業者からその機械は本当に効率が良いかどうか、本音を聞き出すようなこともしている。
結果、3ヵ月でメーン銀行は地元信用金庫、日本政策投資銀行と協調して9億円を金利2・5%で融資することになった。大庫氏は、「このケースは一般的な企業再生と異なり、X社社長の業務改善アイデアをバンカーたちが自分たち自身で客観的に検証し新工場建設に昇華させた。こうしたコンサルティングについて有償で行いその費用もX社に請求している。コンサルの対価を得ることで適切なアドバイスをしなければならない緊張感が生まれてくるのも事実」などと語った。
続いて、大庫氏のほか阿部鋼材社長の阿部大祐氏、北洋銀行常務取締役融資本部長の竹内厳氏、札幌信用金庫常務理事融資部長兼地域経営サポート部長の小谷寿勝氏がパネリストになり、小樽商科大学商学研究科教授の齋藤一朗氏がコーディネーター役を務めてパネルディスカッションが行われた。