函館信用金庫(本店・函館市)と江差信用金庫(同・江差町)は、2017年1月に対等合併する。合併手続き上、江差信金を存続金庫として本店を江差信金本店に、本部を江差信金本部と函館信金本部の2ヵ所とする。理事長は江差信金の藤谷直久理事長が就任、副理事長に函館信金の上條博英理事長が就任する。職員は引き続き雇用する。同じ道南エリアを営業区域とする渡島信金(同・森町)はこの合併に合流しない。何故なのか。(写真は、函館信金本店)
江差信金は、1924年2月に有限責任江差信用組合、函館信金は同年7月に有限責任函館信用組合としてそれぞれ設立され、今年で92周年を迎える。51年の信用金庫法施行で共に信金に改組した。
両信金はまるで兄弟金庫のように規模がほぼ同じ。しかし、函館信金は10年3月期に3期連続赤字に陥り、道財務局出身の黒瀧啓洋理事長が退任。信金中央金庫出身の上條博英氏が理事長に就いて11年には信金中金から28億円の優先出資証券を受け入れて経営再建を進めてきた。
一方の江差信金では1982年から2011年年まで29年間理事長を務め81歳で退任した渡邊捷美氏が独立路線を取っていたうえ、09年には大型不良債権が発生するなど2信金ともに自金庫の事情もあって合併とは一線を画していた。
その後、2金庫の業績は改善、江差信金渡邊前理事長の影響力も弱まり、合併機運は北海道新幹線開業が近づくにつれ高まってきた。少子高齢化に伴う人口減や地域経済の成長鈍化で貸出需要も期待薄という共通の課題を克服するには、規模拡大で経営基盤を強化、業務効率化が避けられない。比較的経営環境が落ち着いており、新幹線の波及需要も期待できる今が好機と捉え両金庫は合併を決めた。
ここで気になるのは、渡島管内森町に本店を置く渡島信金が合併に加わらなかったこと。渡島信金は函館市内にも支店があり当然、江差、函館の2信金と営業地域は重複する。規模拡大と業務効率化の観点からすれば2よりも3の方がベターだ。
渡島信金は道南3信金で唯一、札幌に進出するなどリスクを取る姿勢もある。ところが、13年3月期に13億3600万円の純損失を計上、15年3月期も11億4300万円の純損失を余儀なくされた。15年3月末の自己資本比率は、7・91%で一桁台は渡島信金のみ。
渡島信金の伊藤新吉理事長は理事長ポスト在任20年に及ぼうとしており個性派理事長としても知られる。道南2信金合併から外れた渡島信金は一人旅を続けるのか、それとも飛び地合併を選択するのか。決して順風と言えない経営だけに合併2信金以上に注目が集まる。
江差信金のリリースは、http://www.e-shinkin.co.jp/up_img/gappei.pdf
函館信金のリリースは、https://www.hakodate-shinkin.jp/pdf/2016/info_201601.pdf
【2015年3月末決算の概況】
預金量(平均残高) 貸出金(平均残高) 純利益 自己資本比率
・江差信金 1466億6800万円 632億7100万円 4億円 22・45%
・函館信金 1234億4500万円 685億3500万円 6億200万円 10・24%
・渡島信金 1509億5200万円 974億8000万円 ▼11億4300万円 7・91%