道銀の堰八義博頭取(59)が代表権のある会長に就任し笹原晶博副頭取(58)が頭取に昇格する6月人事が決まった。堰八氏は在任12年の間に、公的資金返済や経営健全化を実現、ライバルの北洋銀行と切磋琢磨できる“強い道銀”を創りあげた実力プロパー頭取。会長ポストに座っても実質的には“堰八道銀”は変わらない。(写真は、北海道銀行本店の入るビル)
堰八氏は、札幌出身で旭丘高校、法政大卒で1979年に道銀入行。拓銀との合併を進めた旧大蔵省出身、藤田恒郎頭取の下で経営企画畑を歩んだ。その後の拓銀との合併交渉破棄、537億円の取引先に向けての優先株発行、450億円の公的資金注入など経営危機に直面していた2002年6月に47歳の無役からいきなり代表権のある執行役員に抜擢された。
1年後の03年6月には48歳で頭取に就任。当時は、藤田前頭取が敷いた北陸銀行との持ち株会社構想が進んでおり、地方銀行で初のホールディングス結成に向けインパクトが必要ということもあって全国最年少頭取が誕生した。
頭取就任後の働きぶりは、まさに馬車馬のごときだった。リーマンショックの時には青ざめたこともあったが、北洋銀が2千億円を超える最終赤字で公的資金を入れざるを得なかったのとは対照的に傷は浅く、ほくほくFGは段階的に返済してきた公的資金を09年8月に完済した。
その後は、アグリビジネスにロシアビジネス、さらにカーリングやフットサルに象徴されるスポーツ振興など道内における道銀の存在感は堰八頭取が自ら広告塔になる形で高まっていった。
数年前から頭取交代の噂はあったものの、「代わる人材がいない」という見方が強く、「本人が望まないにしても長期政権は必然」という声が多かった。
今回、在任12年というタイミングで同期入行の笹原副頭取にバトンを渡したのは笹原氏が副頭取として5年間務め顔が売れてきたこと、堰八氏が5月で60歳になり余力を残して次の仕事に注力できるギリギリの段階であること、堰八CEO、笹原COOなら経済界活動にも軸足を移していけるなどの要因が重なって判断したものと思われる。
札幌商工会議所の通称堰八委員会と呼ばれる成長戦略特別委員会で委員長を務めており、会長に就くことで2年後の会頭交代時に堰八氏は有力会頭候補となりそう。
堰八氏のルーツは青森県。名前の由来かどうか分からないが、川の氾濫が続き村を洪水から守るため率先して堰を作る働きをしたのが堰八氏の先祖だという。堰八氏が47歳で代表権を持った執行役員になった時、「道銀危機の防波堤になりたい」と語っていたが、名前の由来通りの役割を果たしてきた。
頭取を交代しても実質的に堰八道銀体制は変わらないだろう。笹原氏は同期入行組ということでワンポイントリリーフという見方は避けられない。本命の頭取候補は慶応大出身の執行役員と見られている。