ラピダスが2nm半導体試作品でトランジスタ動作確認、小池淳義社長「大きなマイルストーンを超えた」

経済総合

(写真は、ラピダスの工場「IIM-1」)

 ーー後工程の試作が2026年7月で、量産開始は2027年後半から2028年初頭ということになるのか。

 小池 後工程であるチップレット(前工程で製造された個々のチップをパッケージングして最終製品に仕上げる工程)は、重要な戦略と考えている。我々の工場のすぐ近くのセイコーエプソンの場所をお借りしてパイロットを正に始めている。2027年の量産に向けて我々もパイロットを同じように進めていき、これらを合流させて2027年後半には、前工程と後工程を一貫して行う、世界で初めての工場がスタートを切る計画になっている。

 ーー潜在顧客に向けて一番訴えたいことは何か。顧客獲得に繋げる上で、何を一番伝えたいか。

 小池 我々は、シングルウエハーを使ったり、新しい搬送システムを使ったりするなど、世の中では考えられないようなスピードで製造している。お客にGAAが本当にできたということを伝えることには、ものすごく大きな意味がある。お客に期待を持っていただけると確信している。

 ーーなぜこんなに早くできたのか。

 小池 シングルエウエハーや特別の搬送システムを使ったということもあるが、従業員が、本気になって魂を込めて、ものすごい勢いで、ほとんど寝ないで取り組んだことが大きい。従業員は、ありあらゆる工夫をしてきた。シングルウエハーの装置を、装置メーカーと共同開発したり、今までになかったような搬送装置も開発してきたりした。世界にないイノベーションを起こすというモチベーションが、今回の成功に繋がっている。

 ーーEUV露光装置は、扱いが難しい。試作を始めて、その扱いをどう感じたか。量産に向けて、歩留まりを高めるためにどのようなことをしていくのか。

 小池 EUVは「NXE:3800E」という最高級で最高の性能が出る装置を導入した。導入からわずか3ヵ月で露光ができるようになったことは、ものすごく意味がある。IBMでこの2年間、技術の習得を一生懸命やってきた。今回、IIM-1の中で確実に装置の性能を確認することができ、2nmウエハーが現実のものになったというところまで、EUV装置の性能が確認できた。量産に向けて、この性能をさらに高めていくことが必要だ。

 ーー歩留まりについては。量産時の目標は。他社では7~8割だというところだが。

 小池 非常に短い間で、これらの成果を上げることができた。これから量産に向けてトランジスタ特性をさらに高めていき、性能、スピードを高めていく。歩留まりが重要になってくるが、これに関してはいろんな準備をしているが、そう簡単なことではない。確実に2027年の量産に向けて、目標である歩留まりに一歩ずつ確実に高めていくため、入念な計画と準備を進めている。

 ーー今回のウエハーは千歳工場内で完結したものなのか。

 小池 その通りだ。

 ーー「ビヨンド2nm」(AI向けの次世代半導体の開発)ついては、顧客にどう説明しているのか。

 小池 もちろんこれから先にある「ビヨンド2nm」に関しても計画、準備を進めている。顧客には、将来の計画や考え方はすでに説明している。具体的な計画や時期に関しては企業秘密になるので、その時期が来たら説明させていただく。
 
 ーー従業員はどのくらいいるのか。半導体業界では有力人材のヘッドハンティングが重要と言われている。

 小池 14人でスタートして、現在、正社員約800人、派遣を含めて1000人を超える従業員が働いている。毎月のように、熱意と情熱がある30人以上が入社しており、量産時には、2000人くらいの人数を考えている。ありがたいことに、非常に優秀な全世界の人たちがこのプロジェクトに注目していて、あらゆる角度から支援していただいている。人材に関しては、非常に恵まれた環境にあると考えている。

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