東急不動産(本社・東京都渋谷区)、東急不動産R&Dセンター(同・同)、国立大学法人電気通信大学(東京都調布市)の3者は、虻田郡倶知安町の廃校小学校跡地を利用して、「雪発電」とその排熱を利用した「融雪」の実証実験を進めている。2023年度に続く2年目で、今年度は、発電量を約6倍の7kWhに増やすとともに融雪した水を集水、濾過することによって、中水として水洗トイレなどの利用に向けたデータ収集を行う。(写真は、雪発電の実証実験に取り組む電気通信大の学生ら)
(写真は、雪発電システム格納庫の屋根に配置された融雪設備)
東急不動産と電気通信大は、2023年度からニセコ地域の課題解決の一環として、雪発電と融雪の実証実験を進めてきた。雪発電は、温度差を利用して発電できるスターリングエンジンを利用。木質チップを使ったバイオマスボイラーを高温熱源に、雪によって冷やされたエチレングリコールの不凍液を低温熱源に、それぞれ利用することによって温度差を発生させ、スターリングエンジン内のヘリウムガスが圧縮、膨張してピストンが動き、発電する仕組み。
昨年の実証実験では、発電量1・2kWhを確認したが、2024年度は、スターリングエンジンの容量を拡大、7kWhの発電ができるようにした。2025年1月から始まった実験では、1日最大で168kWhの発電を確認。これは一般家庭が、1日で使用する電力量の約12軒分に相当するという。
循環する不凍液は、高温熱源で熱せられるため、今年度は、実際に使われているロードヒーティングの融雪管と同じ材質を使って、雪発電システムを格納している倉庫の前と倉庫の屋根に3m四方の融雪設備をそれぞれ設置。融雪機能を確認するとともに融雪水を集水、濾過して中水としての利用を想定した取り組みも行った。
電気通信大の榎木光治准教授は、「実験では、社会実装に向けてデータ収集が進んでいる。融雪実験では、実際に雪が解けていることを確認しており、屋根の雪下ろしをしなくてもよい状態ができている」と手応えを感じている様子だった。また、東急不動産の開発企画グループの白倉弘規課長は、「倶知安ニセコエリアは冬季にスキー客が増えて水が不足しがち。潤沢にある雪の融雪水が一定程度確保できれば、水不足にも貢献できる」と実用化に期待感を示した。
この実証実験は、東急不動産と倶知安町の包括連携協定の中に含まれる「サスティナブルリゾート形成」に向けた取り組みの一環として行われており、2025年2月でいったん終了する予定という。