青学陸上部監督・原晋氏が札幌で講演、「半歩先の目標をクリアする成功体験を積み上げる」

経済総合

 札幌商工会議所、北海道商工会議所連合会の主催、北海道経営未来塾実行委員会の共催で「TOP SEMINAR 2024 北海道経営未来塾 公開講座」第2回講演会が2024年9月24日、札幌市中央区の札幌パークホテル3階「エメラルド」で開催された。北海道経営未来塾の塾生や札商会員ら約200人が参加した。(写真は、講演する原晋監督)

 このセミナーは、道内の若手経営者を育成する「北海道経営未来塾」第9期講座の拡大版として行われたもので、2024年7月22日に開催されたラピダス(本社・東京都千代田区)・東哲郎会長の講演会に続くもの。今回は、青山学院大学陸上競技部長距離ブロック監督で、同大学地域社会共生学部教授の原晋氏(57)が、「箱根駅伝から学ぶ人材育成術~より良い組織づくりがより良い人材を育てる~」をテーマに約80分間講演した。

 原氏は、1967年広島県三原市出身。世羅高校から中京大学に進み、日本インカレ(大学対抗選手権)5000mで3位に入賞。卒業後に、中国電力の陸上競技部1期生として入社したが、故障続きで5年目に引退。同社で電気の検診や集金業務を行った。その後、営業に移り、新商品を全社で最も売り上げた実績がある。

 陸上競技から離れていたが、低迷が続いていた青山学院大学陸上競技部の監督就任の依頼があり、2004年3年契約で監督に就任。以来、21年間にわたって監督を務め、箱根駅伝では、100年大会となった2024年を含めて7度の優勝を達成するなど、強いチームづくりと選手の育成で実績を積み上げてきた。21年前から、旭川東高校出身の夫人と陸上競技部の学生40人の住む「町田寮」で、管理人も兼ねて居住している。

 監督就任当時は、専用グランドもなく予算が限られていたため、他の大学では常識となっていた北海道での夏季合宿にも行けなかった。「部員たちが、どうしても行きたいと言うので、部員たちにネットで75日前の早割でチケットを取れと促した。その日の朝、午前9時半に予約が始まると、部員たち30人が一斉に何回もアクセスしたので、回線がパンクしてしまい、結局チケットは取れなかった」とエピソードを披露。

「与えられた環境の中で、どうやって目標、目的に近づくかを自然と考えるようになった」と話したうえで、「実績がない中で環境整備などを要請するのではなく、目標を実現したら、こうしてほしいと訴えることが大切。実績をつくる前に要請が聞き入れられたら、人は努力をしなくなってしまう」と話した。
 
 また、組織には理念の共有が不可欠で、その理念に基づいた行動指針と10年後のビジョンが成長には必要だと力を込め、「大きなビジョンは、妄想ととられるかもしれないが、半歩先の目標を一つずつクリアしていけば、10年後には、妄想が現実になる。時間を守る、約束を守るといった地味なベースになることをコツコツとやることが、組織なり、個人を強くする」と自論を展開した。

 最後に「フィードフォワード」という人材育成を紹介、「例えば、足の故障で走れなくなった部員がいたとすると、3つの視点で対応策を考えさせるようにしている。私からああしろ、こうしろとは言わない。組織の心理的安全性を担保したうえで、自発的な対応策を自ら考え、実行することを後押しすることが、金太郎飴ではない強い個の集団になる」と結んだ。

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