札幌商工会議所・岩田圭剛会頭インタビュー「ラピダス、GXそして札幌ドーム」

経済総合

 2024年の北海道経済は、インバウンドの回復により明るいムードで3ヵ月間を終えた。4月以降も景気の持ち直し傾向が続く見通しだ。一方で、ラピダスによる半導体工場建設により、札幌中心部の再開発事業などで人手不足、建設技能者不足が取り沙汰されるようになってきた。札幌商工会議所の岩田圭剛会頭(71、岩田地崎建設社長)に、北海道経済の実態や昨年12月に死去した伊藤義郎元札商会頭(前伊藤組土建名誉会長)の思い出などを語ってもらった。(写真は、インタビューに応える岩田圭剛・札商会頭)

 ーー2024年の北海道経済について、どう展望していますか。

 岩田 昨年来のコロナ5類移行を経て、観光業はほぼコロナ前に近い水準まで戻っています。中国本土からのインバウンドはまだ戻っていませんが、それ以外のアジア諸国からの入り込みは戻っており、消費もまずまずのところに来ています。経済は順調に回復しています。また、ラピダスに対する期待が非常に大きくなっていると思いますし、GX(グリーントランスフォーメーション)に関して金融・資産運用特区を目指す動きなど、先々に希望の持てることがいくつも出てきました。札幌市内では、再開発案件の進展や新幹線工事も佳境になっており、経済浮揚に底堅い動きが続いています。

 ーーラピダスの経済誘発効果は大きいと。

 岩田 まだ、実際的な経済効果がラピダスから出ているわけではないですが、量産に向かってさまざまな効果があると期待できます。ただ、ラピダスに関して言うと、建設業は非常に厳しい状況に陥っています。人の問題や電気、設備の関係が少し滞ってきていて、他の案件にも影響を及ぼし始めています。そもそも労働人口が減り、建設技能者も減っており、ラピダス着工以前から電気工事、設備工事は少し人手不足気味でした。ラピダスの工事が始まって、いよいよ電気、設備業者が足りなくなってきた。これによって、他の建設工事案件では、業者を手配しづらくなってます。実際、建設会社では、設備の契約ができなくて、延期もしくは受注を断る状況にもなっています。

 ーーラピダスによるボトルネックと言えるかもしれません。その出口は見えていますか。

 岩田 今は、見えていません。賃金も上がり、資材価格は高止まりしていますから、設備投資を控える先も出てきました。働き方改革の影響も大きいと思います。

 ーーボトルネックの解消が見えてこない中での建設コスト高騰で、札幌駅前など中心部の市街地再開発事業への影響も懸念されます。

 岩田 建設コスト上昇は、悩ましい問題です。働き方改革で、工期がどうしても延びますから経費も当然かかってきます。それを、発注者側に、どう理解していただけるかということがあります。官公庁の発注工事に関して言うと、かなりその部分を見ていただけるようになっています。しかし、民間工事については、なかなか難しい。なるべく安く、なるべく早く施工してもらった方が発注者には良いですからね。建設を巡る課題をどう理解していただけるかについて、発注者側に一生懸命説明を尽くしている段階です。

 ーーGXについての期待度は。

 岩田 札幌市では、GXについて、金融・資産運用特区申請をしていますが、再生可能エネルギーを含めて北海道のポテンシャルが一番強みがあると思っていますから、それをうまく生かせるように投資をどれだけ引っ張り込めるかです。そうした投資を、札商や北海道商工会議所連合会がどう取り込めるかになってきますす。当会議所も、産学官金21機関からなるコンソーシアム「Team Sapporo-Hokkaido」に入っていますが、さまざまな分科会に分かれて協議をしており、何としてもGX投資を全道に波及させていくようにしていきたいと思っています。

 ーー具体的にGXを経済界に波及させるにはどうすれば良いでしょう。

 岩田 それが難しいところです。地域の商工会議所、商工会を含めて携わることになっていくと思います。食、観光に加えて、半導体、GXは新しい経済の柱になっていくでしょう。それを、私たちがどうやってうまく全道に波及効果を広げることができるか、携わることができるようになるかが、とても大事になります。ラピダスの関係では、清掃や食堂など、稼働が始まってから必要な職種について、全道の商工会議所に声をかけ、ラピダスからの要請に応じて募集するなど一生懸命に取り組んでいるところです。

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