いくつものクレーンが、薄暮の空にライトを点灯させながら動いている。次世代半導体を製造する「ラピダス」試作工場の建設現場。北海道が次の時代に向けて動き出している、象徴のような空間が広がっている。(写真は、千歳市美々で進むラピダスの工場建設)
千歳市美々。つい数か月前まで目的の決まらない工業用地だった場所が、様変わりしている。雑草や低木が生い茂り、千歳湖と呼ばれるあまり知られていない湖もある周辺は、今や日本で最も注目される場所になった。次世代半導体を生産する、ラピダスの工場建設が始まったからだ。最先端技術の国際的なパワーバランスの均衡点を探る中から選ばれたのが、この地だった。
起工式を昨年9月に終え、工事は着々と進む。クレーンが一つ、また一つと増え続け、現在は数えられるだけでも15基に及ぶ。工事の最盛期には、数千人にもなるという建設従事者の気配はまだない。
計画によると、回路線幅2ナノメートル(1ナノは10億分の1)のパイロットラインを2025年初めに完成させて、2027年には、量産ラインを稼働させるという。千歳が世界のCHITOSEになり、メード・イン・北海道が、世界に発信される日が3年後にはやってくる。氷点下の空にそびえるクレーンの数々は、北海道の未来を描くコンパスのように見える。