北海道経営未来塾でWBC栗山英樹監督が熱弁、「できるできないではなく、やるかやらないかを判断軸に」

経済総合

 北海道の若手経営者を育てる官民連携の北海道経営未来塾(塾長・長内順一未来経営研究所社長)は2023年9月8日、札幌市中央区の札幌パークホテル1階テラスルームで、2023WBC日本代表監督の栗山英樹氏を講師に招いた懇談会を開催した。同経営塾の2023年度第3回目の定例講座となるもので、塾生や関係者など約50人が出席した。
(写真は、北海道経営未来塾で講演する栗山英樹氏と塾生を囲んだ集合写真)

 栗山氏は、「言葉の力」をテーマに予定を超える90分間にわたって講演した。栗山氏は、「プロ野球の監督は、『経営者に学べ』と教えられる。経営者は、すべての社員とその家族に責任を負っているので、仕事や社員に対する向き合い方は非常に参考になる」と話した後、WBCで各選手をどう起用したかなど、優勝に向かうモチベーションの高め方などについて触れた。

 そのうえで、大谷翔平選手に言及、「翔平の大好物は、自分ができそうもないステージに立つこと。若い選手と『これはどうだ』と話しかけると、『いやー、それはできないでしょう』という答えが返ってくるが、翔平はそういう答え方をしない。できる、できないというのは、今できないということが判断基準になってしまっている。いつかできるようになるために、選手たちは努力して、できるようになる。だから、今できることをやっても何も変わらない。仮にできなくても、できないことに挑むことによって、自身が持っている力が引っ張り出される。我々、指導者はそういうことを感じているが、そのことを理解している選手は、なかなかいない。翔平は、そういう時にとてもうれしそうに、何とも言えない表情で挑んでいくところがある」と話した。

 2013年に大谷選手が、プロ野球日本ハムファイターズに入団した時のエピソードも紹介。入団当時、球団の中にも二刀流はいかがなものかという意見があったが、栗山氏は球団関係者を前に、「いろんな意見があるのは分かります。何が正しいのかも分からない。でも、私はできる、できないは関係ないと思う。やるか、やらないかです」と話したことを明かした。続けて、「翔平の頭の中に、できる、できないの判断軸はないと思う。できないことに立ち向かえば、新しいものが生まれてくることを分かっているのだろう。そうした若い人たちを増やすことが、組織にとっても重要なのかもしれない。今回のジャパンの選手たちが、そのような気持ちを持っていてくれたのが、勝利に近づいた要因だったのではないかと思う」と述べた。

 最後に挨拶について触れ、「人間関係が悪くなるのは、だいたい挨拶が原因。『あいつは挨拶もしない』と。でもそれは、意味のないこと。上司が部下に挨拶するのは、原理原則。みんなの力で会社や組織が成り立っているのだから、上司が挨拶すれば 必ず部下は挨拶します。そうすれば、『あいつが、挨拶をしない』という考えは消えます」と話し、「当たり前のことができなくなっていくのが、人生であり日々の生活。結局、知っているのに自分で行動を起こさなければ何も意味がない。そういうことが、世の中にはいっぱいあるということを学んだのが、監督生活の10年間でした。今、チームを離れて、なるべく自分で感じ、学んだことを行動するように努力しています。ここにいる若い経営者の皆さんは、これからの日本を背負う気概で頑張ってほしい」と締め括った。

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