アベノミクス効果や日銀総裁に黒田東彦元財務官が就任することで株式市場も活況を呈しているが、2013年の新規株式公開(IPO)社数は何社になるのか。IPO関係者によると上場社数は50~70社になると予測している。昨年の48社から増えるものの一気に増えないという見方が強い。東証と大証の統合を7月に控え、今年は証券市場にとってエポックの年になるが、上場会社数は昨年をやや上回る程度に落ち着きそうだ。(写真は、3月1日に札幌証券取引所で開催されたIPOセミナーのパネルディスカッション)
昨年のIPO社数は、道内の2社(北の達人コーポレーション、ジーンテクノサイエンス)を含めて48社だった。東証にマザーズが創設された1999年は106社でその後は100社前後で推移。2007年は121社になったがリーマンショックやライブドア事件で09年には19社と低迷した。
IPO関係者によると「平均すると1年で100社が相場」と言うが、冷え込んだ株式市場や長期デフレの影響でIPO意欲は萎み、昨年も100社には程遠いのが実状だった。
ただ、IPO関係者によると上場を目指す会社に変化が見えていると言う。
仰星監査法人の重見亘彦氏は、「主幹事証券や監査法人を選択する際に上場を目指す会社は必ずしも大手指向ではなくなってきている。昨年を見てもSBI証券が5社の主幹事を務め日本アジア証券、HS証券も主幹事になった。また監査法人も大手3監査法人以外の中堅監査法人を選択した会社が12社もあった」と言う。
上場数がここ最近では最も少なかった09年の監査法人を見ると、19社のうちトーマツ8社、新日本6社、あずさ4社、個人事務所1社で明らかに大手指向が強かった。しかし、昨年は48社中で12社が大手以外が占めており、25%は中小監査法人を利用している。
さらに上場会社の本社所在地も東京圏以外に増えてきたのも特長。昨年は48社の内で関東30社、それ以外が18社もあり、2対1で地方会社の躍進が目立つという。
地方の会社では事業承継が課題になっており、ベンチャーキャピタルなどがオーナー会社から株を取得して上場を目指す事業承継型IPOも増える流れにある。さらに上場環境として追い風になるのが労務関連の審査やJ―SOX(内部統制整備)緩和の流れ。
今年は現時点で上場承認を受けたのは13社で昨年の同じ時期の7社から1・5倍ほど増えている。
岡三証券企業公開部長の小塚正樹氏によると、「手を上げている会社は最新集計では78社あるが、市場環境にもよるので最低50社、最高70社ではないか」と言う。昨年よりも増えるが、一気には増えないというのがIPO関係者の一致した意見のようだ。上場準備をストップしていたところも今年から本格的に動き始めると見られ、100社に到達するのは来年以降になりそう。
(※3月1日に札幌証券取引所で開催されたIPOセミナーを参考に記事化しています)