北海道でも浸透してきた高級食パンだが、札幌が主戦場となる一方で地方展開に各ブランドの差が出ている。「純生食パン工房HARE/PAN(ハレパン)」をFC(フランチャイズ)展開するT.H.S(本社・埼玉県越谷市)は、8月に日高管内に2店舗を同時出店、他のブランドとの違いを際立たせた。札幌圏で高級食パンが日常化してきた中で、「HARE/PAN」は地方展開に力点を移している。(写真は、都心のアンテナ店舗として出店した期間限定の「HARE/PANアピア店」)
札幌の高級食パンブランドは、「乃が美」や「乃木坂な妻たち」、「銀座に志かわ」、「嵜本」、「HARE/PAN」、「一本堂」、「ラ・パン」、「ベーカリー・ワンカラット」、「ル・ミトロン食パン」、「僕のパン屋 純情セレナーデ」、「暮らせばわかるさ」などが知られている。「スーパーアークス」や「コープさっぽろ」の店舗でも、インストアベーカリーで高級食パンを手掛けるなど市場は大きく拡大した。
2017年9月、札幌市に高級食パン専門店をいち早く出店した「乃が美」は現在、旭川市や函館市、室蘭市、帯広市、北見市など10店舗を展開。ベーカリープロデューサー、岸本拓也氏の開業支援による専門店も恵庭市、帯広市、旭川市などに広がっている。
全国展開している高級食パンブランドは、北海道で人口が多い上位10市に出店が集中(便宜上、釧路郡釧路町曙地区は釧路市としてカウント)しているが、独自路線を行くのが「HARE/PAN」。20年8月に北海道1号店の「札幌店」(札幌市中央区)、同年11月に「札幌福住店」(同市豊平区)、21年4月には「釧路店」(釧路町)をオープンさせた。その後、他のブランドと同じような出店履歴を辿るかと思われたが、8月5日に「日高富川店」(沙流郡日高町)と「浦河店」(浦河郡浦河町)をオープンさせた。日高管内に高級食パン専門店が出店するのは初めて。日高管内7町の人口は約6万3000人、高級食パンの市場はそう大きくない。ニッチな市場でトップを目指す出店と言えそう。
札幌圏や旭川圏では高級食パンが日常化し、かつてほどの勢いはない。各ブランドが出店に慎重姿勢を取る中で、「HARE/PAN」は地方展開に踏み切った。9月3日には、JR札幌駅直結の商業施設「アピア」のファッションウォークに「HARE/PANアピア店」を2022年1月末までの期間限定で出店した。この店舗を、都心のアンテナ店として位置付け、ブランドの地方浸透を図り、その受け皿として地方の実店舗の需要を掘り起こす考えだ。