バケツの中に入った球状の生ホップを、仕込み釜の上部の穴から投入する「ホップ投入式」が9月1日、恵庭市のサッポロビール北海道工場で行われた。バケツに入っているのは、前日に摘み取った空知郡上富良野町産生ホップ。投入したのは、恵庭市の原田裕町長と上富良野町の齋藤繁町長。14年目を迎える「サッポロ クラシック 富良野VINTAGE 」(以下、「富良野VINTAGE」)製造には、欠かせない作業だ。これから1ヵ月半、生ホップのフレッシュで芳醇な香りと「サッポロ クラシック」(以下、「クラシック」)の爽快な後味を両立させた「サッポロ クラシック 富良野VINTAGE 2021」が誕生する。
(写真は、サッポロビール北海道工場で行われた生ホップ投入式。左から恵庭市・原田裕町長、上富良野町・齋藤繁町長)
ビールの仕込み室に入ると、むっとした暑さが伝わってくる。仕込み釜では、麦汁を100℃で煮沸しているため、釜を設置している室内の温度も40℃程度になるという。「クラシック」の製造工程では乾燥させたペレット状のホップを空気搬送、自動的に釜内部に投入するが、「富良野VINTAGE」はバケツに生ホップを入れて手作業で釜に投入する。「生ホップは、水分含有量が80%で空気搬送できない。生ホップの良さを保つためには手作業で投入することが不可欠です」と野村真弘工場長。
生ホップの命は鮮度。摘みたてたものをできるだけ早く使うことが求められる。鮮度の劣化は味に影響する。この日の「ホップ投入式」に使われた生ホップは、前日にサッポロビール社員4人と契約農家の人たちが摘んだもの。その日のうちに、冷蔵状態で上富良野町から恵庭市まで約150㎞を運んできた。「上富良野町と恵庭市の程良い距離が、生ホップの使用を可能にさせています。これ以上離れているとおそらく使用できないでしょうね」と野村工場長は言う。
「富良野VINTAGE」は、基本的に「クラシック」の製造方法を踏襲している。コーンやコメなどの副原料を使用せず、麦芽を100%使用、ホッホクルツ製法(高温短時間仕込)製法によって旨味を高温で短時間で抽出する。このため、麦芽100%でありながらも、すっきりした飲みやすさに繋がっている。違うのは、ホップの種類。「クラシック」は香りが穏やかで上品な苦みの質が良い高級ホップのファインアロマホップを使用しているが、収穫後に60℃の熱風で乾燥させペレット状に加工、数ヵ月から1年経ったものを使っている。「富良野VINTAGE」は摘みたてホップを乾燥せずそのまま使用、ホップ本来のみずみずしい香りと「クラシック」の爽快な後味を両立させている。生ホップを使ったビールは国内で例がないという。
生ホップの量は非公表だが、8月末の2日間で摘み取り作業を行い、仕込み釜への投入は数日で終わる。投入後には10℃くらいに急速冷却、その後、酵母で熟成させて製造する。
投入を終えた原田市長は、「例年この時期にホップを投入しているが、恵庭で製造していることをうれしく思う。今年も期待して出来上がりを待ちたい」と話す。齋藤町長は、「今年の上富良野は高温に見舞われたが、ホップの成長は良好で良いものが穫れたと聞いています。昨年末に町長に就任したので、初めて投入式に立ち会えることをうれしく思います」と語った。
これから1ヵ月半後の10月19日(火)、北海道だけの期間限定「富良野VINTAGE」が店頭に並ぶ。
(写真は、上富良野町産生ホップ「フラノスペシャル」と10月19日発売の「サッポロ クラシック 富良野VINTAGE 2021」)