北海道発祥で、今や北海道にしかないファミリーレストラン「ヴィクトリアステーション」。30年、40年と北海道とともに歩んできたこのファミレスが、一店、また一店と姿を消している。今度は「手稲東店」(札幌市西区西町北11丁目1—1)が営業を終了することになった。(写真は、4月25日で閉店する「ヴィクトリアステーション手稲東店」)

 ファミレスが街角から剥がれるようになくなっている。全国的な傾向で、コロナ禍によって剥がれる速度が加速している。ファミレスには、古き良き時代の響きがある。40代、50代の人たちは、親と一緒に一度や二度は食べに行った思い出があるに違いない。店内の賑やかさと日常を少し超えたような浮遊感、運ばれてくる料理。それらが、子ども心に記憶に残り、絆を意識する空間でもあった。大人になってから行くファミレスには、そんな遠い記憶に分け入ってゆくような場の力があった。それが、「ファミレス文化」と言われる理由かもしれない。

 時代の流れに抗しきれずファミレス閉店は進んでいるが、コロナ禍でその速度は一段と速くなった。北海道の雄、「ヴィクトリアステーション」は、1月に「旭川忠和店」(旭川市)、2月に「苫小牧船見店」(苫小牧市)と「篠路店」(札幌市北区)、3月に「江別高砂店」(江別市)と「函館若松店」(函館市)が閉店、そして4月25日には「手稲東店」(札幌市西区)が営業を終える。4ヵ月で6店舗の閉店とは、あまりにも速すぎる。

 チェーン店とはいえ、それぞれの「ヴィクトリアステーション」には、その地域が形づくった個性があった。役目を終えた店舗は、看板が外されて時が止まったような佇まいを見せるもの、解体されてゆくものなど様々。文化を伴ってきた「ファミレス」の剥落(はくらく)は、街角の体温を確実に下げているが、新たな文化の担い手は見えてこない。



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