札幌国際大学の濱田康行学長(北大名誉教授)は、北洋銀行と北大の包括連携事業の一環として開かれた市民医療特別セミナーで『健康な経済と会社』をテーマに講演、今日の不健康な経済を医学的なアプローチで分析、「資本主義は第4楽章に入っている。資本主義にこだわらないソリューションを考えなければいけない。国があまり干渉せずに協同組合の精神を経済フィールドに埋め込んでいくべき」と主張した。(写真は、8日に行われたセミナーで講演する濱田康行学長)
 
 このセミナーは市民を対象にした医療分野の講演のひとつとして行われたため、濱田学長は現在の不健康な経済を医の世界から見た場合の原因とその解決策について言及した。
 
 経済学の源流を遡ると、イギリスのペティやフランスのケネー、ドイツのフィルダーニングなどいずれも医師だったと紹介。人の体が病気になるのと同じように人々が構成する社会も病気になることに3人の医師は目を向け、統計的手法の社会現場への適用や富の循環を示す経済表の作成など経済学の基礎を作った。
 
 濱田学長は、「健康な社会は健康な経済からなり、健康な経済は健康な企業からなる」として、健康で健全な企業とは失敗から学ぶことができる企業と強調した。
 
 リーマン危機以降、日本は不健康な経済になったが、本来ならソビエトの崩壊で資本主義のひとり勝ちになるはずだったのにそうならなかった理由は①もともと資本主義には持病があった②社会主義の崩壊やグルーバル化に対応仕切れなかった――という2つの理由がある濱田学長は指摘。
 
 今年に入って米オバマ大統領の一般教書演説と野田首相の所信表明演説では奇しくも2人は「中間層を復活させよう」と述べたことを紹介、「中間層は一番需要を作りだす層で、中産階級が厚いと社会は安定するからだ。しかし、米国や日本の国内は逆の方向に進んでおり中間層は没落、国ごと中産階級化する中国などに需要を求める『寄生性』で自分たちの国の健康を取り戻そうとしている」と述べ、こうした“ぶらさがり社会”では社会そのものを滅ぼしかねず、シュンペーターの言う“創造的破壊”が必要とした。
 
 旧社会主義国が資本主義に移るにあたり、無限の欲望を開放したが、欲望全開では長続きせず禁欲、節欲を時代や国、文化的背景とミックスさせる必要がある。しかし、グローバリズムは「神の手」のような調整者がおらず「イギリスのスーザン・ストレンジの言う『国家の退場』で暴走が始まり、そうなると世界は鄧小平の言ったように黒猫化してしまう」と分析。
 
 世界の黒猫化を止める方法として、濱田氏は資本主義の枠内に留まる場合と枠を外す場合を想定。留まる場合は、京セラ稲盛流の全委員参加型組織によるアメーバ経営や堀場製作所の堀場流『ジョイフル&ファン』という一人ひとりが面白おかしく輝く経営が参考になるとする。
 
 また、資本主義の枠を外す場合は、資本主義の中にある白猫の部分を大きくして暴走を止めることが必要とした。
 
 濱田学長は、「資本主義は第4楽章に入っており残された時間はあまりない。黒猫化する資本主義の経済フィールドに、白猫としての協同組合精神を埋めることを考えるべき」と提案していた。



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