ファイナンス調整で債務カットしても再生できない中小企業が増えている。中小企業を取り巻く環境がここ数年で激変し、とりわけ金融円滑化法で借入先金融機関から時限猶予を与えられている中小企業は、再生に必要な固有技術やノウハウ、人材が枯渇寸前。そこで、札幌市内の弁護士や公認会計士、税理士など30人が集まり、新たなステージに入った中小企業再生を支援しようと有限責任事業組合「北海道企業活性化パートナーズ」(通称・北開道TAP=ほっかいどうタップ)を設立、2日に発足記念の特別セミナーを開催した。(写真は特別セミナーで行われたパネルディカスカッション)
TAPの設立母体になったのはNPO法人の北海道活性化センター(タクティクス)。同法人では弁護士や公認会計士が集まり、経営者の養成や起業支援を行うフロンティアカレッジを開催しており設立9年目で200人を超える塾生を輩出してきた。
タクティクス代表理事の村松弘康弁護士は、こうした活動を通して中小企業の実態を見てきたが、経済低迷による中小企業経営が質的変化を起こしていることを体感。とりわけ経営難に追い込まれている中小企業の再生がここ1~2年で急速に難しくなってきていることから、専門家を集めた再生プロジェクトチームによる法務、財務、マーケティング、M&Aなど総合的再生支援が必要と判断、TAP設立の動機になった。
発足記念セミナーでは、東京で活動している再生支援の専門家である岸本光永氏(ファイナンシャルアナリスト、協同組合アンビ・コンサルティング・パートナー理事長)と大田研一氏(企業再生投資顧問、日本CFO協会主任研究委員)が基調講演。
岸本氏は、「ビジネスモデルの劣化とともに経営者の劣化も進んでおり、バブル期以後90年代の再生と性格が異なってきている」と述べ、大田氏も「事業不振に陥った中小企業はM&Aがその解決策のひとつになる」とM&Aを前向きに考えていく必要性を強調した。
続いて行われたパネルディスカッションでは、「最近の相談は『どうしたら良いか分からない』というものが多い。我々は『こうしたいのだが、どうしたら良いか』という相談には助言を与えられるが、ビジネスモデルが崩壊している中小企業が多いのが真実」(加藤玲・財団法人北海道中小企業総合支援センター理事・政策管理部長)、「再生の答えがなくて処方箋が書けないケースが多くなっている」(村松弁護士)、「北海道で不振企業が経済社会から退場してしまえば、技術、ノウハウ、人材、資産がゼロになって何も残らない。パーツでも残すべきではないか」(藤井治彦公認会計士)、「「不採算事業で債務超過でもデパートに口座を持っていたために高い値段で事業売却できたケースもある」(花田和政公認会計士)など、それぞれのパネラーから実態に即した意見が出された。
TAPの代表を務めることになった藤井氏は、「弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士のほかにもマーケティング専門家など約30人のネットワークがTAP。国や道、市の支援制度は整備されているが、TAPはそれらを横断的に運用しつつ金融機関とも連携を密にして中小企業の再生を支援していきたい」と語っている。
問い合わせは、北海道企業活性化パートナーズ(電話011・281・1181、http://www.h-tap.jp)