地域で世界に羽ばたく経営者を育てる仕組みが定着してきた。札幌で始まった「北海道経営未来塾」。22日に札幌市内のホテルで行われた3期生の修了式を取材してその思いを強くした。産業界(札幌商工会議所、北海道商工会議所連合会など)と行政(札幌市)が一体となって進める経営者育成の取り組みは他都市ではあまり見かけない。札幌発の新しい経営者育成スキームは全国でも参考になるかもしれない。(写真は、北海道経営未来塾3期の修了証書授与式)
(写真は、3期を修了した塾生たち。この日は35人の塾生のうち30人が出席した)

 人口減少、少子高齢化は全国どこでも大きな課題。北海道、札幌はそのスピードが早く、課題先進地と位置付けられる。若者の道外流出も多く、地域経済の持続・発展は行政にとって重い課題。その一助となるような取り組みとして3年前に始まったのが、北海道経営未来塾。塾長の長内順一氏(72)は、元ニトリ特別顧問。参謀役としてニトリ躍進を影で支えた知る人ぞ知る存在。

 長内氏自身は経営者ではないが、経営者としてのモノの見方や考え方、人脈の大切さなどを自身の生き様から学び取ってきた。地場大手のほくさん(現エア・ウォーター)に勤め市議から国会議員になり挫折も経験した。順風満帆ではなかった中で培われた“長内観”が、北海道発で今や世界企業にまっしぐらのニトリの成長風土をつくってきたのは紛れもない事実。

 北海道経営未来塾では、世界を動かす一流経営者の講義をほぼ毎月聞くだけではなく、その経営者の経営観、人間観に気づくこと、則ち“気づき”を学ぶことに重きが置かれる。質問やその後のレポート提出など能動的行動が必須で、実践的MBA講座ということもできそう。塾生は地場企業のジュニアや創業経営者など30歳代が中心で30~40人の規模。

 修了式では塾生たちが1人5分間のスピーチを行うのが恒例。今回、3期生30人のスピーチをすべて聞いたが、自身を客観視し現在の経営者としての力量を冷静に把握、その上で目標を明確に描き、そこに至る道程に必要なことを具体的に掴んでいることがうかがえた。

 塾生である北海道の若手経営者同士が何を考え、何をなそうとしているのかが相互に理解できただけでも北海道のこれからにとって大きな資産になる。青年会議所や異業種交流会ではなく、経営者育成という明確な目的がある北海道経営未来塾。北海道発の取り組みとして全国各地域のモデルとなりそうだ。


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